ひなまつり
昨日3月3日はひな祭りだった。女の子の成長を祝い、願い、喜ぶための節句である。
つまり、武士には関係ない。
「だが某、全ての人に幸あれと願っておるぞ」
その全ての人の中に女の子も含まれているから、ひな祭りを開催したいってか? 志は立派だが、お前結局イベントを楽しみたいだけだろうがよ。つーかそもそもひな祭りってなんだっけ? ひなあられを鬼にぶつけて追い出す祭りだっけ?
「それは節分。一ヶ月前に終わった」
嘘だろ、時間の流れに心と体が追いつかねぇよ……。
「ひな祭りといえば、雛人形であるな。お内裏様とお雛様がおって、五人囃子がおって……」
あれ、三人官女が先じゃなかった? まあいいか。でもうちにお雛様なんて上等なもんないよ。
「構わぬ。体裁さえ整えば」
ってことは、代替案でもあるの?
「うむ。まず、赤き布を敷く」
毛氈の代わりね。でもホカロンの靴下を使うのはどうかと思うよ。
「洗っておるから」
じゃあいいか……。
「ここに、どんぐり殿と、にぼし殿を鎮座させる」
出た、武士の(シルバニア)ファミリー。どんぐり殿がリスでにぼし殿がネコである。この二匹がお内裏様とお雛様になるんだな。
「間に銀之丞」
シマネコの赤ちゃんが間に入った。子連れの挙式じゃん。めでたさに拍車がかかるな。
「ほかに愛らしき友たちを敷き詰め……」
タコやペンギンのぬいぐるみがどんどん集合させられていく。そして……
「完成だ」
ついに、武士特製のお雛様が完成した。めちゃくちゃファンシーだが、これはこれでなんだかいいな。シルバニアファミリーの下から見えるホカロンの字の圧がすごいけど。ぬいぐるみが多すぎて三人官女五人囃子どころじゃないけど。
よし、今晩はひな祭りにちなんで、ちょっと豪華なちらし寿司を食べるか!
「その言葉を待っておった」
あ、もしかしてちらし寿司食べたいがためだけにここまでやったの?




