武士とこども
休日、うちに近所の小学生男子たちが遊びに来た。
「ちょんまげー! あそぼー!」
生憎私は今から仕事に行かねばならぬので、家にあげるわけにはいかない。しかし、武士が友人と出かけるのはもちろんオッケーだ。今日は近くの公園で影踏み鬼ごっこをするらしい。
「では行ってくるぞ、大家殿!」
うん、こども達が危ない目に遭わないよう、しっかり大人のお前が注意してやるんだぞ。
そう言って、私は武士を見送った。
しかし、その五分後。さてそろそろ出勤しようかと立ち上がった時である。
「おじさーーーーん!! おじさーーーーーん!!」
元気いっぱいのお子ボイスが近所に響き渡った。さっきの子たちである。なんだなんだ?
ドアを開けると、興奮した様子の少年と目が合った。
「おじさん! あのね、ころんでさー! ころんで、血がいっぱい出た! すげーびっくりしてね! おじさんに助けてもらおーって!」
おん? ……えっと、誰か転んで怪我したの? そりゃびっくりしたし痛かったよね……。わかった、手当てしたげるから玄関入りな。どの子が怪我したの?
「ちょんまげ!」
お前かい!!!!
見ると、半泣きになった武士の月代を女の子がヨシヨシとしていた。
「両膝を擦りむいてしもうた……!」
「ちょんまげ、だいじょぶよー。今手当てしてもらうからね!」
なんでお前が世話をされる側なんだよ。仮にも成人男性がこんなことじゃだめだろ。しっかりしろよ。
しかしそうツッコむと、こどもたちから一斉に「ちょんまげいじめるなー!」と抗議の声が入った。頼りない武士だが、こどもたちからは慕われているようだ。




