表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
500/679

パン

 武士はカリカリに焼いた食パンにマーガリンといちごジャムを塗って食べるのが好きだ。好きだけど、放っておくと三枚でも四枚でも食べるので注意が必要だ。米を食べて稼いでくれ。


「逢魔時色のじゃむや夕焼け色のじゃむも食したが、やはりいちごが一番である」


 逢魔時色……? あ、紫色とかだからブドウジャムかな。

 夕焼け色……? 赤色じゃないなら橙色か。じゃあオレンジジャムかな。

 わざとわかりにくく言ってるだろ、お前。


「もう一枚」


 さすがにやめてくれ! 4枚切りの食パンの4枚目だぞ!? 家計が簡単に逼迫する!


 とまあ今でこそこうして食パン大好き侍へと成長した武士だが、初めてパンを見たときはこうじゃなかった。初めて見る未知なる食べ物に、心の底からおっかなびっくりで……。


『……それにしても、よい匂いがするな。よい匂いのものはよい味と相場が決まっておる。うむ、馳走になるぞ(私の返事を聞く前に伸びる手)』


 ……いや、全然食べてたな。匂いを嗅いで全てを判断してたわ。きのこでそのパターンを実行するとあっさり死ぬから気をつけてほしい。

 まあ、その時はある程度私への信頼もあったということだろう。


 そんな武士に本日持ってきたのは、こちら。たこ焼きパン。


「たこ焼き……?」


 4枚切り食パンへと伸ばそうとした手を止め、訝しげな目でこちらを見る。そう、たこ焼きパン。その名のとおりたこ焼きっぽい見た目で、実際味もたこ焼き。ソースがしみしみで中に入ったタコがおいしいパンよ。


「おいしいパンか……」


 そうパン。


「……」


 おそるおそるたこ焼きパンを見る武士である。しかし、突然カッと目を見開いた。


「うまそうな匂い。これはうまい味だ、間違いない」


 いつもの武士論でパンを引っ掴むと、もぐもぐ食べ始めた。おいしかったのだろう。すぐに幸せな笑顔になった。

 よかったよかった。それにしてもこいつ、昔から何も変わってないな。絶対野良きのこと出会わせちゃいけないわ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ