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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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献血1

 献血に行ってきた。生まれて初めて行ってきた。

 理由は特にない。というか、以前から気になってはいたのだが、何かとタイミングが合わなくて機を逃し続けていたのである。たまたまえげつない睡眠不足だったりとか、親知らずを抜いた直後だったりとか。

 だが、ついにこの日が来た。睡眠時間はたっぷり、親知らずはすべて駆逐済みである。


 というわけで武士、行ってくるぜ!


「けつ?」


 後半だけを取り上げるな! 献血だよ! 血を献上してくるの!


「血を……? なにゆえ……? 大家殿はかようなまでに悪しきことを成したのか……?」


 拷問じゃないよ! 拷問されるのにこんな生き生きと出かけてたら、だいぶ狂人だろ!

 怯えんでいい。献血ってのはいいことなんだから。

 この時代、医療技術も相当発達してるんだけどね、血液を人の手で一から作るってできないんだよ。だから病気や手術で患者さんに血液がじゃんじゃん必要になった場合、他の人から分けてもらわないといけなくなる。


「ふむ、それは想像できる」


 だから私も血の提供に協力しようかなって。しかも全血献血っていうがっつり血をあげるタイプの献血は、男の人なら年に三回、女の人なら年に二回しかできないんだよね。なら早いに越したことはないかなと。


「なるほど。素晴らしき心がけであるな」


 ありがとね。いやあ、やっぱ助け合いの心って大事だよ。不可抗力な状況でも頑張らなきゃいけない人を、できる範囲で応援する。縄文時代の頃から我々はそうやって生きてきたんだ。


「定紋時代……?」


 決まった紋のある家がたくさんあった時代って意味なら、江戸時代が相当するかもな。


「しかし、大家殿の説明で概ね献血なるものを理解した。あいわかった! であれば、某も一肌脱がねばな!」


 お前ならそう言ってくれると思ったぜ。

 でも、残念ながらダメなんだ。


「なぜだ!? この身に流れる血潮は、山に流れる清流のごとく澄んでおるぞ!」


 澄んでちゃだめだろ、血液なんだから。

 いや、献血には身分証明書が必要なんだよ。お前持ってないだろ。


「ぐぬう……! 血に関しては大家殿よりも見事なものを持っておると自負しておるのに!!」


 それは否定しないけどさー。やっぱ社会人、ストレスや運動不足だったりで多少なりとも血と目は濁るもんだからね。

 つかお前、一応普通の生活は送れてるけどまだ全然闘病中だろ! 自分の身を優先しろ!!


 とにかく行ってくるよ。お留守番よろしく。


「うむ。自らの身に流す分の血は、ちゃんと残しておくのだぞ」


 採取量はあらかじめ決められてるから大丈夫だよ!!

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