おぴかの者
最近知って驚いたこと。
武士が、ポケモンは実在すると思っていたこと。
「大家殿、この場所にピカの丞はおらぬのか」
先日動物園に行った際、ぷいぷい鳴くモルモットを眺めていた武士が突然そう口にした。ピカの丞――おそらくピカチュウのことだろう。武士とはそれなりに長い付き合いなのですぐにわかった。
いないよ。動物園に、ピカチュウは。
「左様か……。いつか、野生に生きるピカの丞に会ってみたいものよ」
いないよ。野生にも、ピカチュウは。
「……」
うん。
いない。
「……無……?」
無ではない! 断じて、無では、ない!
かれこれ幼少期の頃から夢中になったゲームの世界で生きるモンスターを無だとは思いたくない!!!!
「架空?」
そう、架空の存在なんだ。ピカチュウは、ゲームの世界で生きるモンスターなんだよ。
「ケツバトラー?」
ケツで戦うゲームとは関係ない! あってたまるか!!
「しかし、げに愛おしき桃玉の世界を隅々まで見ても、ピカの丞はおらんかったぞ」
カービィの世界にもピカチュウはいないだろうなぁ……。
えーとね、ゲームといっても本当にたくさんあるんだよ。そしてそれぞれの世界観は独立してる。わかるだろ? カービィがケツに刀を挟んで戦ったりしてたか?
「むう……思い返せば、そういう変形もしていたような」
するかぁ!! 一刻も早く捨てちまえ、そんな存在しない記憶!!
「うむむ……だが、そうか……ピカの丞は、おらんのか……」
明らかにしょんぼりする武士である。それを察したのか、モルモットたちがぷいぷい集まってきた。いや、これは武士が持ってるおやつのキャベツ(100円)が気になってるだけだな。
……。
……確か、うちに買うだけ買って積んじゃってたポケモンのゲーム(ソード)があったから、一緒にやるか?
「やる」
よし、やろう。それが済んだらポケモンセンター行こうな……!