ミシン
布団カバーが盛大に破れたが、結構きれいな破れ方をしていたので縫って再利用しようと思った。しかし手縫いでは少々骨が折れる作業になりそうだったので、大家さん(私が住んでいるアパートの真の大家さん)からミシンを借りてきたのだ。
さて、かなり久しぶりに使うけどうまく使えるかな……。
「ぬ。なんぞ、そのからくりは」
いつものように、のそのそとやってきたのは武士である。こいつはどこも破れていないからミシンは必要ない。
「みしん? みしんというのか? 何に使うのだ?」
早速気になったと見え、ぺちぺち叩いたりしている。やめろやめろ! あぶないよ!
ほら見ろ! ここ、鋭い針がついてるだろ!?
「? うむ」
よく見てな。スイッチを入れて、このボタンを押せば……。
ドドドドドドドドッ!!(針最大速度)
「ぬおおおおおおおおおおおおっ!!!???」
武士はぴゃっと飛び退いた。私の背中に隠れてぶるぶると震えている。
「拷問のためか?」
違うよ! 裁縫道具のひとつだよ! 針と糸を使って自動で縫えるの!
そんで拷問なわけないだろ!! 現代日本に住む平和的一般人だぞ私は!!
「……ほう……」
裁縫もできる武士、また興味が出てきたらしくひょっこりと出てきた。今度は私も針を遅めに設定し、ゆっくりと本命の布団カバーを縫い始める。確か返し縫いとかしなきゃいけなかったよな……。
「ほう……ほほう……これは便利だな……」
武士はうんうんと頷きながら観察している。ふふん、そうだろう。これもまた現代文明の光だ。
「大家殿、縫い目が盛大に右に曲がっておる」
いいんだよ、これ家で使う用だから。




