マグカップ
武士がマグカップを割った。
「すまぬ」
いいよいいよ、怪我がなけりゃ。
「しかし、こうなっては新しい湯呑みを買わねばならんな」
いや、その必要はない。なぜなら……
まだまだッ! 大量にッ! マグカップはあるんだからなァァァァァッ!!!!(食器棚を開く音)
「な、何ィ~!? なにゆえ大家殿の家では湯呑みがひしめいておるのだ!?」
マグカップは無難なプレゼントとして上位に入る存在ッ! その上、景品やキャラグッズにもマグカップがあてがわれることが多く、少し前まで結婚式に出たら結構な頻度でもらうことが多かったッ!! しかも! 陶器は! 長持ちッ!!
ゆえにッ! こうして我が家にマグカップ博物館ができたというわけだッ!!
「なるほどな。ではこの中から選ぼう」
武士はうきうきとマグカップを選別し始めた。
10分後――。
「好みの湯呑みがなかった」
そうですか。
「よって、某の好みに合う、愛らしくて胸踊る湯呑みを調達しに参りたい」
断りたいところだが、その気持ちはよくわかる。結局私もお気に入りのマグカップを割ったら、新しいの買いに行くもんな。
じゃあこのマグカップ博物館は閉館させて……。
おでかけするか! 武士!!
「恩に着るぞ! しかし。これら湯呑みは永劫ここに貯蔵しておくのか? いっそ質屋などで売るべきでは?」
それはそれでもったいない気がしてる。
「貧乏性よのう……」