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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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ひげそり

 昔からヒゲを剃るのが苦手だ。

 最近新しくしたシェーバーの性能が良く、「すげぇ剃れる!」と調子に乗っていると皮膚まで剃ってしまった。痛い。皮膚を感知したら慌てて刃を引っ込めるAIとか搭載されてほしい。

 やはり、直剃りがいけないのだろうか。クリームを挟んだほうがいいのだろうか……と痛むあごを気にしながらリビングに帰ってくると、武士に眉をひそめられた。


「またやってしまったのか」


 またやってしまったのよ。


「鍛えておらぬからそうなる」


 そういう問題じゃないと思うよ。でも武士はヒゲ剃り上手だよね。

 リンゴを小分けにできそうなごついカミソリ使ってるってのに。


「鍛えておるからな」


 やっぱお前の中ではそういう問題なの? よしんば鍛えられるとして、あごの皮膚にはどんなトレーニングをつけてやればいいの?

 武士は意外と丁寧な暮らしってのができるやつだ。江戸時代に生きていた人間だから当然と言えば当然かもしれないが。


 それにしてもヒゲ剃りは面倒くさい。いっそ伸ばしてしまおうか。


「ヒゲは伸ばしたほうが手入れが大変だぞ。物草な大家殿には無理だ」


 一理ある。そう言う武士こそヒゲは伸ばしたりしないの? そっちのほうが威厳は出ると思うけど。


「できぬな」


 できぬの? そこまで嫌い?


「いや、某がいた場所ではヒゲを伸ばすことが禁じられておったのだ。なんでも風紀が乱れるとかで……」


 あー、そうなの? じゃあ気にせずヒゲを伸ばす人は……。


「ひっ捕らえられておったと聞く」


 ヒゲ伸ばして罪に問われるならそりゃ剃るなあ。江戸もなかなか大変だね。


「だが実際に風紀を乱しておったのは、あごをつるつるにした色白の男であった。その者は、とある長屋のおかみさん全員と通じとったと聞く」


 それはヒゲ関係ないと思うよ。

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