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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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武士と女性

 先日、営業の外回り中にたまたま家の近くを通ることがあった。その際、武士が一人の女性と親しげに話しているのを目撃したのである。

とはいえ武士は非常に打ち解けやすい性格をしているので、道を尋ねられたりもするだろう。よくあることだとそう思って、特に話題にも出さなかったのだ。

 しかし、これが二度、三度と続けば変わってくる。五度目に二人でいるのを見かけた時には、もしや武士と彼女にとって、既に互いが特別な存在になっているのではないかと私は邪推するまでになっていた。


 実際どうなんですか、武士。


「ぬお、見ておったのか大家殿」


 私が彼女を知っていたことに、武士は存外驚いていた。

 そりゃ家の前で話してたら気づくだろ。私も途中荷物取りに帰ったりするし。


「それもそうか。ううむ、しかし気恥ずかしいな」


 そう照れることないだろ。いい年の男女が話しているうちに互いを意識するのは当然のことだ。


 まあ……


 相手、齢70に差し掛かるだろうおばあさんだけど……。


「たえこさんと言うのだ」


 素敵な名だね。


「78歳」


 だいぶ若く見えるよ。


「趣味はお裁縫」


 そのご年齢で細かい作業ができるのは羨ましい。


「最近物忘れがひどく、よく迷子になる」


 だからお前のデートコースはいつも同じルートだったのか。


「あの道なら途中に喫茶店もあるでな。休憩しながらご自宅まで送り届けられるのだ」


 いいことしてるよ、お前。で、そんなたえこさんに対して特別な感情は?


「もう迷子にならないでほしい。そして、どうか今後とも転ばないでほしい」


 孫視点だな。順当。


「あとこの間、『じいさんと別れるから一緒になってくれ』と言われた」


 この流れでちょっと痴情がもつれかけることあるのかよ。次にたえこさんが迷子になってたら私か警察を頼るんだぞ。

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