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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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武士と絵

 残業中、職場で後輩に「今年って何年でしたっけ」と聞かれた際、「確か平成……」と答えてしまったことをここに白状します。

 なお後輩からは「違います、西暦で教えて下さい」とツッコまれました。後輩も私も疲れてたな。今年は令和7年、西暦2025年です。


 そういえば最近、武士にノートと鉛筆をせがまれました。なんでも日常のちょっとした風景を絵で残してみたいと思ったとのこと。素敵な心がけだけど、別に写真でもいいんじゃない?

 そう言うと、武士は「やれやれ、何もわかっておらぬな」みたいなしたり顔で首を横に振った。


「絵には絵にしか出せぬ味があるだろう。そして某は、絵でしか見えぬ世界を描いてみたいと思ったのだ」


 おお……かっけえこと言うじゃん。じゃあ描いたら見せてね。


「承知!」


 それから数日後……。


「描けたぞ」


 武士がノートを持っていそいそやってきた。

 なぜか、今まさに私がトイレに行かんとするタイミングで。

 ……えっと、あとでもいい?


「ならん」


 そんなわけねぇだろ。

 ああもうわかったわかった、今見たらいいんだろ!? 雑な感想になるかもだけどお前のせいだからな!


 武士のノートを拝見する。描かれていたのは公園で武士とこどもが遊ぶ絵だ。スケッチというより絵日記みたいなものだが、色鉛筆も使って頑張って描いたのだということがよく伝わってくる。素直ないい絵だ。

 でも……。


「なんだ。何か不満があるのか?」


 不満というか……。

 なんで、登場人物全員ムキムキなの?


「……」


 お前と遊んでるこどももムキムキ、少し遠くのベンチで座っているおばあさんもムキムキ、この犬っぽい生き物の肩幅なんかすげぇことになってる。当然お前の胸筋は今にもはち切れそうだ。


「それは……体がどのような動きをしていたか、自分の体を見ながら写したゆえ……」


 なるほど、お前の体が移植されてしまったと……。

 じゃ、トイレ行くね……。


「ならん」


 なんでだよ! 行かせろよ!

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