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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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トイレを借りた日

 帰宅すると、武士が神妙な顔で出迎えてくれた。


「本日、外出中に尿意が限界を迎えてな」


 会話がロケットスタートすぎるだろ。せめて私が手洗いうがいを済ませるまで待ってくれませんか。


「爆発しそうになってな」


 膀胱が?


「急ぎ解決せねば、往来にて恥を撒き散らすこと必至。某は小走りで周辺をさまよったのだ」


 それは大変だったね……。撒き散らすのは恥という名の尿だろうけど。


「すると、たまたま近くに稚児らが通う寺子屋があった。その時の某は既に一刻を争う事態。恥をしのんで向かった」


 確かに学校でトイレを借りるのと往来で漏らすの、ハードルが低いのは前者だからな。それでどうなった?


「驚かれたが、無事に雪隠に案内された」


 そりゃそうでしょうよ。


「ここの寺子屋は堅牢な城のごとし。外から寺子屋を訪ねる命知らずなど滅多におらんのだろう」


 驚かれた部分そこじゃねぇわ。ちょんまげが内股小走りで現れたことにびっくりされてんだよ。


「刺客と思われたか?」


 違うよ! この時代、ちょんまげってだけでちょっと目を引く対象なの。数年住んでるんだからそろそろわかってくれよ。


「しかし周りの者は一切動じぬぞ」


 それは単なる慣れです。


「慣れか……」


 はい。


「とにかく某はあの寺子屋に一雪隠の恩ができた。いずれ返していきたいと思う」


 一飯の恩みたいに言う。

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