よくない夢
武士と出かけている時に、高校時代の友人とばったり出会った。友人は道端に座り込んでおり、胡乱な目で私を見上げ、言った。
「まだ友達って思ってくれてる?」
しかし私が何か答える前に、友人は煙のようにかき消えてしまった。次いで聞こえてきたのは武士の悲鳴。慌ててそちらに駆けつけた私の目に映ったのは、斬殺死体となって工事中の鉄骨からぶら下がる友人の姿だった。
という悪夢を見て飛び起きた。
「なんぞぉ!!」
私の悲鳴に武士も飛び起きた。ごめんな、戦の始まりかと疑うようなほら貝じみた悲鳴で。
「ふむ、おそろしい夢を見たと申すか。ならばあの地の底から響く妖怪のごとき声も納得できる」
いやあ、何か悪い事の前兆じゃなければいいんだけど。
「む。夢はんじというものか?」
夢はんじ? ああ、夢占いみたいなやつね。へー、江戸時代にもそういうのあったんだ。代表的なものだとどんなのがあるの?
「初夢に富士山を見たら縁起がいい」
めちゃくちゃ知ってた。
「茄子や鷹を見るのも良い」
それも知ってる。
「全身が光ればいいことがある」
なにそれ。
「植木を植えるのは良い夢だが、座敷に草木が生えるのは悪い夢」
それは何となくわかる気がする。はー、色々あるんだねぇ。
じゃあ長く会っていない友人が惨殺死体で発見されて捜査に協力したり集まってくる野次馬に嫌悪感を抱いたりする夢は?
「知らん……」
だよね……。
じゃあちょっと検索してみるか。
……。
友達が殺されてショックを受ける夢は、近々予想外の出来事が起きるのを暗示してるんだって。
「予想外? まさかその友人が現実でも……!?」
そういうのは正夢っていうんだよ! 縁起でもないこと言うんじゃない!
でも久しぶりに連絡取ってみよう。もしかするとまた一緒に遊んだりできるかも。
……。
メール、宛先不明で返っていた。
「早速予想外の出来事が起きたな」




