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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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左手薬指

 職場の同僚女性と道で立ち話をしていると、偶然武士が通りかかった。


「……!」


 ニヤニヤしていた。それはもう絵に描いたみたいにニヤニヤしていた。

 そして、帰宅。案の定、早速彼女について尋ねられた。


「かの乙女に某を養う覚悟はおありかな……?」


 ツッコミどころが多すぎる。そもそもなんで誉高き武士が乙女に養われようとしてるんだよ。おかしいだろ。

 つか、あの人既婚者だから。左手の薬指に指輪があるの見なかった?


「左手……? 薬指……? 指輪……?」


 あ、そっか。江戸時代にはまだ結婚指輪の概念はなかったか。外国の影響でね、結婚したいって思った相手には自分とペアの指輪を贈って、二人で左手の薬指につけておく習慣があるんだよ。それで既婚者かどうかも見分けられるの。


「……?」


 不可解な顔してる!


「だが、街に出ればじゃらじゃらと指に装飾品をつけた者が大勢おる。よもやあの者らには、装飾品の数に応じた配偶者がおると……?」


 あれはただの装飾品だよ! 安心しな!

 左手の薬指につけるってのが重要なんだよ。理由は知らないけど。

 ……。

 外国の言い伝えだと、左手の薬指は愛情を象徴するんだって(調べた)。だから左手の薬指に相手とお揃いの指輪を嵌めるのは、永遠の愛を誓いますって意味になるんだわ。


「ほう。ならば気になる者がおった場合、皆相手の左手薬指を凝視するというわけか」


 嫌な言い方だな……。凝視せんでもチラッと見ただけでわかるだろ。


「遠目からではわからん。特に某のような奥手の男であれば尚更」


 奥手? お前が? 奥手って奥の手を隠し持ってるって意味じゃないからね? いやそっちだとしても意味わからんけど。

 むしろ外見で判別できる部分があるだけいいだろ。その点江戸では苦労してなかった?


「そうでもないぞ。某がいた場所では、髷の結い方を見れば夫がおるかどうか一目瞭然であったからな」


 何その判別方法!?


「丸髷のおなごには亭主がおる」


 髪型の自由度低すぎない!?

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