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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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保湿

 ゴリゴリに冬だ。空気は乾燥し、それに伴いお肌の水分も持っていかれる。

 保湿クリームやリップクリームが手放せない時期だ。しかし武士は不思議とそれらを求めない。まあ江戸時代の人だし、現代もやしの私とは違って肌が強くできているのかなと思っていたのだが……。


「大家殿、ちと油をいただくぞ」


 夜、武士にそんなことを言われた。

 菜種油? 別にいいけど、晩御飯はもう済んだしそんなもん何に使うのよ。


「顔に塗る」


 顔に……。

 え!? もしかしてお前油まみれの顔で布団に入る気!? やめろマジで! 油じみってマジで落ちないんだから! つかなんで油……!!


「ぬりぬりぬりぬり」


 話を聞けーーーー!!!!




 武士を風呂場にぶん投げて話を聞いたところ、油を塗って保湿しようとしたとのことである。確かに椿油ってあるけどさぁ。


「某は見目にも気を配る男であるからな」


 予想される油じみにも気を配ってほしかったな。

 とにかく食用油は使っちゃダメだよ。美容目的で作られてないんだから肌に塗っちゃいけないの。それよりホラ、これ。


「この青き容器は……?」


 みんな大好きニベアの青缶だ。それを塗れば当面肌の地割れは免れる。


「ほう」


 武士はしばらくしげしげと眺めていたが、おもむろにごっそり青缶に手を突っ込んだ。

 やめんか! 何お前前世ブルドーザーなの!?


「適量を知りたい」


 こそぎ取る前に聞けよ!! いいやもう! 全身に使え、それ!


「ぬりぬりぬりぬり」


 ……。


「……」


 ……。


「うむ……油よりも、某の肌を守ってくれているように思う」


 よかった。なんたって現代の叡智だからね。


「これも江戸に持って帰る」


 気に入っちゃった。


「そして皆に売る」


 定期的な仕入れルートを確保できればいいけど、そうじゃなきゃニベアの青缶を巡って血の雨が降りそう。

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