急な高熱
食欲を生命力のバロメーターだと思っているので、人が食欲をなくすと心配になる。
ところでこちらにおりますのは、昨夜突然高熱が出て食欲を失った武士です。解熱剤もきかないし、さすがに病院かな。でも休み明けの病院は患者さんが多くて、逆に風邪をもらってきそうな気も……。
「ぬぬん」
力のない鳴き声にそちらを見ると、武士が台所に向かってずるずると這いずっているところだった。何してんの?
「腹は減っておらぬが、昨日大家殿が買ってきてくれたどーなつだけは食べたい」
ああ、ミスタードーナツ……。食欲がなくても欲はあるみたいだな。安心した。
ドーナツをちびちび食べる武士を見守りつつ、出勤。解熱剤が切れていたことを思い出し、昼休みを利用してドラッグストアに来た。ここは薬剤師さんが常駐しているので、気軽に相談できてありがたい。
昨晩武士に使った市販の解熱剤が効かなかったことを相談。他に効きそうな薬はないだろうかと薬剤師さんに尋ねたところ……
「病院を受診するほうがいいですね。市販の解熱剤が効かないならインフルエンザの可能性もあるので」
そういうわけで、急遽半休をもぎとって帰宅した。オラァ武士! 病院カチこむぞ! 準備しろ!
「一揆!?」
こんな小規模な一揆があるか! もしかして幻覚見えてる!? いいから病院だ!
検査の結果、インフルでもコロナでもないと判明。全然熱が下がらないだけの気合いの入った風邪だということがわかった。
「ふぁみちきたべたい」
これは病院帰りの武士の発言。解熱剤をぶちこんだのち、もりもり食べ始めたのでひとまず安心した次第である。




