表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
463/681

はつもうで

 初詣に行ってきました。以下、周囲の人々の反応。


「何あれ武士じゃん」

「ちょんまげーっ! ちょんまげーっ!」

「ありがたい」

「初日の出かと思った」


 だいぶ武士も現代の景色に馴染んできたように思う。同居人である私も嬉しい限りだ。

 一方本人はというと、鳥居の前で腕を組みじっくりと本殿を眺めていた。


「……この場所だけは、不思議と江戸とそう変わらんな」


 もちろん本殿はものを言わず、ただそこに建っているだけである。だけど私は、神社という空間そのものに確かな温度を感じている気がしていた。歴史は時間を超えて人と人とを繋ぐ後ろ盾だ。ここにいる間、武士や私は歴史を通じて江戸時代に触れることができるのだろう。

 そういうことだろ? 武士。


「おお! 綿菓子が売っておるではないか!」


 もう別のところに気持ちが向いてるー! もっと浸れよ!! なあ!!!!

 何にせよ出店はおてて清めてお参りしてからだ! 行くぞ!


「おみくじも引きたいぞ!」


 無邪気だねぇーっ!! 神社という清浄な場所にぴったり! 来年は巫女さんやりな!?




 二礼二拍手一礼。しっかり済ませて今年も健康を祈る。武士の体調はまだまだ気が抜けないので、お気持ち多めのお賽銭だ。


「すぱちゃ!」


 確かにリアル投げ銭だけどさぁ。


「今頃神の目には、お参りに来た者の名と祈りの内容が赤文字となって映っているのだろうな」


 そんなシステムじゃないと思うけど……。でももしそれが採用されてるなら、お賽銭投げてない人はまずいないだろうから画面赤文字しか流れてないんじゃない? ニコ動の真っ赤な誓いみたいになってると思うよ。


「真っ赤な誓い……?」


 ごめん、なんでもない。


「真っ赤な誓い……?」


 擦るな擦るな。ほら、あっちにおみくじあるよ。


「おみくじ! お賽銭よりも金をかけてつい買ってしまう人も多かろうな!」


 そういうことは家で言いな! いいから引け!


「ぬー」


 どうだ!?


「吉!」


 いいじゃん! ちょうどいいよ! 取り急ぎ病の欄を読み上げてくれ。


「医者の言うことよく聞け」


 お、ひとまず安心だね。


「縁談、年上に話を進めてもらうと良い」


 ほう。


「……」


 ……。


「つかぬことを聞くが、大家殿は某より年上だったな?」


 知らん知らん知らん決めつけるな。つか、お前に紹介できるような人がいる甲斐性あるならとっくに私が結婚しとるのよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ