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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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mochi

 ご町内餅つき大会というイベントに参加してきた。最初私は行く気がなかったのだが、武士がもう見ていられないほどノリノリで気づいたら申込みを済ませていたので行くしかなくなった。

 で、当日。公民館に向かった武士と私は、既にお集まりの皆様ににこやかに出迎えられた。


「新年早々お侍さんにお会いできるなんて縁起が良いわぁ」


 そう言って武士を拝むご年配の方までいた。おばあちゃん、よく見て! そいつジャージの上にフリースとダウンジャケット着込んでるよ!! サムライ要素ちょんまげしかないよ!!

 さて、年々参加者が減るこういったイベントにおいて私や武士などの男手は貴重である。やれお湯運び、やれ力仕事とすぐに仕事が振られた。


「活気がある場所に出向けるのは嬉しいな!」


 武士はこれら仕事をものともせず、すいすい重たそうなもち米を運んでいる。一方、普段デスクワークがメインでせいぜい営業回り程度の運動量しかしない私はすぐ音を上げた。


「大家殿……」


 そんな目で見るな。もち米はノートパソコンより重いんだ。お湯だって本当はマグカップで小分けにして運びたいぐらいなんだ。


「そのように自分を下げることを言うでない。大家殿の筋肉はザコだ」


 お前も下げてんじゃねぇか!! 誰の筋肉がザコ仕様だ!!


「ぬ!? ザコとは将来大きくなると期待される小魚のことを指すのではないのか!?」


 あ、鍛えれば伸びるって言いたかったの!? ごめんね!


 そんなすれ違いを起こしながらも、私はお餅にあんこを入れて丸める係を与えられた。これならできそうだ。そう思って早速やり始めたのだが……。


 ……難しいな……。


 丸めても丸めても一ヶ月後の鏡餅みたいにひび割れてしまって戻らない。あんこもそれ見たことかと端から飛び出す始末だ。なんだこれ。

 悪戦苦闘していると、おばちゃんがそばに来てくれた。


「お餅はね、そうなっちゃうとだめなの。一度思いきり伸ばして表面をなだらかにしてあげて、そこにあんこを乗せる。それから後ろでくるっとまとめると上手くできるわよ」


 おばちゃん……希望の光……。


 一方、武士。


「ぬおおおおおお!!!! 秘技! 公家衆の滝登り!!!!」


 謎の必殺技名と共に餅をついていた。詳しくないんだけど、そのへんいじるのって江戸では何らかの罪に問われないの? キッズと限界状態の受験生たちにはすげぇウケてるけど。


 ついた餅は家に帰って武士と二人で雑煮して食べました。おいしかったです。

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