私が書く小説
「大家殿の小説を読んでみたい」
お帰りください。
でも普段からお前との生活をネタにしまくっている身としては、無下に断るのもどうだよって話だな。よし、ここはひとつお前の望みどおりの小説を書いてやろう。
「そんなことができるのか!? ぜひ頼みたい!」
よしよし、それじゃアンケート取ってみよう。
まずひとつめ。主人公は誰?
「勇者!」
……。
え、そういう世界観なの? もっとこう、和風なやつじゃないの?
「勇者!」
そ、そう。いいよ。やってみよう。えー……仲間は?
「いらん」
硬派。んじゃ敵は?
「魔王!」
どこで覚えてきたのよ……。あっ、ドラクエか! 舞台は?
「城!」
うんうん、いいね。勇者の目的は?
「魔王との和解!」
おお、交渉人じゃん。かっけぇ。魔王は?
「和解しようと思う勇者を喧嘩する方向に持っていく」
……。
主人公:勇者
敵 魔王
舞台 お城
勇者の目的 魔王と和解すること
魔王の目的 和解しようと思う勇者を喧嘩する方向に持っていく
魔王「ははは、よく来たな勇者よ! 世界滅亡を企む我を止めるには、もはや戦いしかない……! さあ、かかってこい!」
勇者「待て魔王! 話し合おう!」
魔王「今更話し合いなど無駄なことよ! 剣を取れい! だが我の暗黒魔法は貴様を粉微塵にするだろう!」
勇者「待て魔王! 話し合おう!」
魔王「いやだから話し合いなど無意味! 決着は互いの血を捧げねば訪れんのだ!」
勇者「待て魔王! 話し合おう!」
魔王「話聞けよ!!!!」
勇者「話し合おう!」
魔王「あのね、無理なんだって。お前ここに来るまでにめちゃくちゃ我の手下倒してるじゃん。それで今更話し合いとか無理なわけよ」
勇者「話し合おう!」
魔王「それしか言葉知らない人? あと我だって今日ここに至るまでに人間殺しまくってんのね。なのにお前話し合いで解決していいの? 無理じゃない?」
勇者「話し合おう!」
魔王「マジでそれしか言わないじゃん。話し合いたいのに全然話通じないじゃん」
勇者「話し合おう!」
魔王「我怖くなってきたんだけど」
どう?
「良いな! これが大家殿の書く小説か!」
ノリと勢いはそうだね。さすがにいつもはもうちょっと推敲するけど……。
「遂行? 闇討ちか?」
この流れで闇討ちはないだろ。もっと文脈読めるようになれ。ほら、星新一の本貸してやるから。
「む、大変だ大家殿。某は別のことがしたくなってきた。腹筋ろーらーが我を呼んでおる」
集中力の切れ方がこどものそれか?
「今行くぞ、ろーら姫!」
ドラクエ1に出てくる姫の名前!!