食洗機買った話
おう武士、私とお前にプレゼントを買ってきたぜ。
「某と……大家殿に?」
まぁ普通はそういう反応になるな。だが、これは紛れもなく私とお前へのプレゼントなんだ。前々からずっと買いたい思っていたものの、なんやかんやで機を逃し続けてきちゃってさ。ブラックフライデーってことで思いきって買っちゃった。
「舞楽無頼伝」
舞を伴う古楽の無法な伝説が始まっちまう。
「して、何を買ってきたのだ?」
ふっふっふ……見て驚け泣いて騒げ。これこそ現代における神器のひとつ!
自動食器洗い機だ!!!!
「……」
せっかくうやうやしく披露したというのに、当の武士はいまいちピンときていないようで、ツンツンとつついている。仕方ない、説明してやろう。
そこの箱に汚れた食器を入れてボタンを押せばあら不思議! しばらく後には綺麗になった食器が鎮座してるってシロモノよ!
「な……なんと!」
ふふふそうだろう。驚いただろう。いやー、私もお前の反応が見たくて頑張ってるところあるからね。思う存分喜んでもらって……。
「ついに人は、かような小さき箱にスポンと入ってしまえるようになったのか!」
人力で動かすんじゃねぇよ。エレキテルからくりなの。むしろ小さい人が入っちゃってるほうが非現実的だろ。
「だがドラえもんではよく見た」
あれは遠い未来の話で……。
「遠い未来……?」
そうだね、あと百年もしないうちに来ちゃうね……。
いやいや、ドラえもんはいいんだよ。今は食洗機を喜んでくれ。
「うむ、実に便利な物であるな。油汚れも落としてくれるのか?」
説明書によるといけるらしい。あ、でもたまに汚れが残ってることもあるから確認してくれって。
「ふふん。では某のほうが有能であるな?」
お前の洗った茶碗、たまにカチカチになったご飯粒ついてんじゃん。いい勝負だよ、きっと。
「今後は負けぬ!」
いいよ、コイツに任せちゃえよ! 機械と張り合うな!




