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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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ヒモ

 他人の噂話や芸能人のゴシップやら、ドラマやらWEBサイトの漫画広告やら。

 そんなものでソレを見るたびに、何故人はこんな不毛な生き物を飼うのだろうと鼻で笑っていた。


 ヒモ。


 ヒモ男。


 パートナーの収入をアテにして自力で生活しようとしない男のこと。



 ……あれ、私ソレ家に置いてね?



「其れは“ヒモ”ではない」


 言及すると、武士はムッとして言った。

 そもそもヒモは知ってんのかよ……。テレビ教育すげぇな。


「ヒモとは、おなごに金銭を貢がせ本人は家でだらりと暮らす情夫を指す。某は情夫ではないし、もとより大家殿の好意に甘えて部屋を借りているだけで、貢いでもらおうとは微塵も思っておらん」


 ……。

 借りてるだけなら、いつか返してくれるのか。


「うむ、返すぞ。大家殿が江戸にやってきた時には、好きなだけ我が屋敷に居座るがいい」


 あ、そういうやり方ですか?

 状況がまずあり得なくね?


「分からんぞ。某だってある日突然ここに来てしまったのだ。逆が起きんとは限らん」


 まあ、そうか。

 そんじゃもし私があの時お前を追い出して、その上で私が江戸にタイムスリップしたらどうしてたの?


「その時は、武士の誇りをかけて、『こいつは嫌なやつ』だと触れ回っていた」


 お前性格悪いなぁ。

 知らない土地、知らない時代でそれをやられたら野垂れ死ぬぜ。


「そうだろう。某も、大家殿が助けてくれねば恐らく同じことだった」


 そう言うと、武士はトッポをかじりながら振り返った。


「つくづく、大家殿には感謝しか無い」


 そういうもんかねぇ。


 ともあれ、私が武士を家に置く理由が一つできた。

 いつか私が江戸時代にタイムスリップした時に、そこで拠点を得るための保険である。


 ……。


 いや、だからあり得ねぇだろ!!


「あ、やはりさっきの問いは“B”が正解だったぞ! 某はそうだと思っていたのだ!」


 一方の武士は、もうこの話題に飽きたようでテレビに夢中になっている。その姿を見ていたら私も考えるのが面倒になり、トッポを一本つまんだのだった。

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