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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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夜景

 昨日の続き。文明が開花していなかった時代に生まれ育った武士は、現代日本の夜がいかにきらびやかかを知らなかった。そこで私は、いっちょコイツに夜景を見せてやろうと思い至ったのである。

 会社から帰る途中にレンタカーで車を借り、帰宅! 突撃! おーい武士! 夜景見に行こうぜ!


「なんぞぉっ!? なんぞぉっ!?」


 水を発射して突起に輪っかを入れる謎の携帯ゲームをしていた武士を引っ張り、車に押し込む。


「このからくり猪はどうした!? ついに悪事に手を染めたか!」


 盗んでねぇわ! 借りたんだよ!


「友人らしい友人がおらぬのに?」


 お前高速道路で途中下車させられてぇか!


 もちろんそんなことはせず、武士を連れて夜の街を駆け抜けた。そしてたどり着いた夜景スポット。小高い丘の上に公園があり、そこから街が見下ろせるのだ。

 どうよ、武士。これがこの世界の夜だぜ。


「おお……輝いておるな。まるで花火を空から地面に向かってぶっ放したようである」


 地上の花火ね。風流なたとえするじゃん。


「花火は瞬きの間に消えるが、この光は一向に消える様子がない。街灯と、くるまの明かりでできておるのか?」


 それと建物の明かりかな。この時間帯だったらまだ働いている人も多いし。


「?」


 あ、本気で意味分かんないって顔してる。

 それにほら、家に帰ってきたら明かりをつけるじゃん。それも含まれてるよ。


「なるほど。つまり、これら明かりの下にはめいめい人が暮らしておるということか」


 そうそう。まああと一、二時間したらみんな寝て、明かりも少なくなってくるんじゃないかな。


「ほほう……。叶うならその景色も見てみたいものだな」


 お、そうする? そんじゃこの辺で晩飯食べて、帰りにまたここに寄ってみるか。


「よいのか? うむ、ならばそうしよう!」


 それから二時間後、私達は同じ場所に立っていた。

 眼下にはなおも変わらずきらめく街。それを見た武士の開口一番。


「変わっておらんではないか!」


 じゃあみんな働いてんだよ。


「夜でも昼のように明るいせいで本来眠る時間に働いておるとしたら、いっそ提灯のほうがよかったのではないか?」


 お前が総理大臣になったらそういうふうに決めてくれや。応援してるで。

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