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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
439/679

虹を見た日

 先日、特に冷え込んだ日。営業で外回りしてた時に、雨のようなあられのような雪のような、どうにも微妙な液体が降ってきた。寒かった。仕事中に突然降る雨が一番骨身に染みるから。

 そんな折、なんとなく顔を上げたら、ビルの間から虹が見えた。

 息を呑む。手を掲げて太陽を遮り、じっくりと眺める。虹は大きく、両端とも綺麗にオフィス街にかかっていた。

 だが、今感じている寒さと比べたら割に合わねぇ。私はコートの前を合わせて足早に目的地へと向かおうとした。


 その時である。スマートフォンがメッセージの着信を知らせた。武士からだ。


『おおやどの そら は すでに三鷹 みごとな にじ ぞ』


 なんで「見たか」だけ誤字った上に漢字なんだよ。そんなことを思いながらぽちぽち返信する。


「見たよ。虹かかってたね」


『なんと三鷹 つまり おどろきは ないと』


「ないね。むしろ雨に降られて冷たい思いをしたから割に合わないって思った」


『草』


 なんで古のネットスラングだけ使いこなしてるんだよ。腹立つな、コイツ。


『にじ の はしっこ を いつか みにいきたいとおもう』


「そういや昔お前とそんな話もしたね。あの時はどういう結論に至ったっけな」


『それが いまだ』


「今? 今って何? 今田?」


 ……返ってこなくなった! まさかアイツ、本当に虹の端を見に行ったんじゃないだろうな。


 あ、メッセージ来た。


『あめに うたれた ほんじつ さむ』


 秒で心折れてやがる。コイツ、江戸に戻ったとして武士としてやっていけるのか?

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