武士がぬくぬく毛布を改造していた件
「できた」
武士の嬉しそうな声に私はゲームをしていた手を止め、顔を上げた。最近、武士は縫い物を始めた。最初は何度も指を突き刺し遠慮のない絶叫を披露していたが、ここのところ慣れてきたらしい。簡単な裁縫ならできるようになっていた。
「見るがよい、大家殿。よいものができたぞ」
おう、よかったな。何ができたのよ。
「湯たんぽつき毛布」
何それ、最強じゃん。
「ほれ、これだ。まずは大家殿が上様より賜りつつも持て余していたこの毛布を二枚、重ねて縫った」
ひざ掛けね。粗品としてもらったけど使わないし、かといって捨てるのももったいないしで押入れの肥やしになってたやつだ。
「ぽけもん毛布を使おうとして怒られたことは根に持っておる」
ミスドのかわいいポケモンひざ掛けを初心者裁縫の材料として譲るわけないだろうが。そっちはありのまま使え。根に持つな、心狭いな!
「そして毛布の一部を縫わず、二枚の毛布の間に湯たんぽを挟める仕様にした」
いいね。ちゃんとU字型に縫ってるから、湯たんぽが毛布の下まで落ちきらず途中で引っかかるようになってる。
「最後に口の部分をまじ……まじ……何度でも求め合う布二枚を縫い付けて、完成だ」
マジックテープをそんな気色悪い呼び方するの、後にも先にもお前だけだよ。
「どうだ」
かなり良さそうだな。ちょっと使ってみよう。で、湯たんぽって何使えばいい? 元はひざ掛けだし軽いほうがいいかな。〝レンジでゆたぽん〟を入れてみる。
……おお……。
いいな。熱すぎず、じんわり膝から温かさが広がっていくのが心地よい。朝や家でのパソコン作業のお供に良さそうだ。これの上に足を置いて、毛布をぐるっと足回りに巻いてもいい。便利なの作ったじゃん、武士。
「ぬふふ、そうであろう」
んで、これ私にくれるの? ありがとね。おかげで家にいる間の細々した作業が捗るよ。
「いや、あげようかと思ったが、やはり某が頭からかぶろうかと」
ポケモン毛布使えなかったの根に持ってんじゃねぇよ!
(※共同で使うことになりました)