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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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秋過ぎ去りし散歩道にて

 季節の中では秋が好きなのだけど、今年は風邪をこじらせたせいで一番いい時期を家で過ごしてしまった。本当は、日が落ちた夜道をコンビニスイーツが入った袋をぶらさげて歩きながら、金木犀の香りに気づいたりしたかったのに。


 などという話を武士にしたら、やつは言った。


「こんびにすいっつをいただきたい!」


 よって私と武士はファミリーマートへ向かうべく立ち上がったのだ。

 現在時刻は午後11時。

 一歩外に出た瞬間後悔した。


「凍てつくような寒さ」


 武士は帰宅した。

 早いよ! ドア開けて閉めただけの人じゃん! つーか寒いのはわかってただろ!

 仕方ないので武士にヒートテックを二枚重ね着してやった。使い方として正しいのかはわからないが、ヒートテックもうちに来たからにはルールに従ってもらう。

 それで上着をはおれば外に出られるぐらいにはなったようで、二人で夜の街をだらだら歩いたのだ。


「そろそろ三太殿にけえきを供える時期だな」


 白い息を吐きながら武士が言う。三太とはサンタクロースのことだ。訂正が面倒くさいのでもうそういうことにしている。


「掃除もせねばならんし、ご近所の者たちに挨拶もしておきたい。あっというまに一年が経ってしまったな」


 そうね。歳を重ねるごとに時間が早く過ぎていく気がする。

 姉ちゃんとこの息子さんなんてもう小学生だってさ。ランドセルしょって学校行ってんだぜ。


「学校……ああ、寺子屋なるものか」


 そうそう。


「馬鹿な。かの小さき者は先日某がおしめを替えたばかりだぞ。あのよちよち歩きで行けるのか?」


 7歳だからもうよちよち歩きじゃないんだよ。


「馬鹿な!」


 どっこい紛れもない真実よ。こどもの成長ほんと早いよね。怖い。でも本当に怖いのはその分時間が経過しているはずの自分の肉体だ。


「このままだと『先日百寿を迎えたばかりなのにもうお迎えが来たのか……』と今際の際に口にしてしまう」


 お前何歳まで生きる気なの? 流石にその頃までには江戸に帰れよな。



 ファミリーマートでは、私はクッキー&クリームケーキ、武士はダブルクリームたいやきを買った。カロリーとか知らん。あるのがいけない。

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