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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
433/588

ゆっくり

 そういうわけで肺炎になり、しばらくの間は自宅安静を強いられた。問題だったのは、私が喉をやられているために声を出せず、武士との意思疎通が難しくなっていたことだ。なお武士は軽い風邪で済んだため、この頃には元気いっぱいである。


「話ができぬのは剣呑であるな」


 前転しながら武士が唸る。それ前もやってたけど流行ってんの?


「かといって大家殿に無理に喋らせるわけにもいかぬ。喉に負担をかけ、ますます容態を悪くさせてはいかんからな」


 ご配慮ありがとよ。前転やめてくれたらもっと嬉しいんだけど。あ、尻を壁にぶつけた。


「何かいい方法はないか」


 ちなみにここまで私は無言である。つまり武士は今、独り言を喋りながらぐるぐる部屋の中を回るバケモノになっている。怖いね。

 だが確かに武士と話せないのはまあまあ不便だ。よって、最終手段を取ることにした。


“オーイ、ブシ”


「何奴!!?」


“ワタシダヨ、オオヤダヨ”


「大家殿はかような声ではないが!?」


 ――皆さんはSofTalkをご存じだろうか。いわゆるゆっくりボイスである。そしてこのゆっくりボイスでもって、入力した文章を読み上げてくれるスマートフォンアプリがある。

 私は今、それを使用している。ゆっくりしていってね!


「なるほど、そのあぷりを使えば大家殿も声を発せるというわけか」


“ソノトオリ”


「少々時間はかかるが、良いな。某も大家殿と話せて嬉しい」


“ヨカッタナ”


「だが、そもそも某が大家殿のすまーとぽんを覗きに行けば済む話ではないか?」


“ウルセェ、フキトバスゾ”


「ぬぬう! 悪口に文明を使うでない!」


 最後のセリフはぜひSNSで叫んでもらいたいものだ。いや、文明使わなくても悪口は言っちゃダメなんだけど。

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