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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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忘年会

 そういえば、年末のラストに起きた地獄をここに書くことでお焚き上げとしときます。


 不景気は波のように寄せては返す。五年前の不況が今になって影響を及ぼしてきたりするんです。うちの会社も例外ではなく、あの時新人をとるのを渋り倒した結果今の部署で私が最年少だったりする。

 で、忘年会の余興をまたも頼まれたのだ。悪しき風習と言えなくもないが、まあそれはいい。「今回はコレをやってくれ」と先輩に指定されることがほとんどだし、かかる費用は会社が負担するからだ。真っ先に削るべき予算だろ。


 そして、今年指示されたのが……。


「こすぷれで乾杯の音頭をとるだと……!?」


 おう。

 コスプレの意味はもう説明しなくてもわかるな?


「こすもぷれい」


 宇宙規模?

 まいっか。私のコスプレで銀河系の奥歯ガタガタいわせてやるよ。


「何を着る予定なのだ?」


 早速見せてやるよ。実はいくつか候補もらっててさ……。


「それはよいな。選ぶ余地があるならば最悪の顛末は防ぐことができる」


 人のコスプレ捕まえて最悪の顛末言うな?



 はい、それじゃ紹介していこうね。その1。


 バニーガール。


「……」


 その2。


 ミニスカメイド。


「…………」


 その3。


 ベビードール。


「………………」


 以上!!!!


「最悪の顛末ではないか!!」


 週刊誌に百円払うから社会問題にしてくんねぇかなぁ。


「おぬしが金を払う側なのか?」


 だって見ろよ。どれを選んでもどうしようもないよ。こんな服着せられた成人男性が司会してる集団に、料理や酒を運ばなきゃならない店員さんがかわいそうだよ。


「かわいそうという点ではその時の大家殿に敵う者は皆無だと思うが……」


 そうだ。試しに武士、着てみない?


「着るわけなかろう」


 そんなこと言うなよ。バニーガールなんてどう? もうすぐ卯年も終わるしさ。


「ならぬ。某はお上より刀を賜った武士なのであるぞ? そのような不埒な服を着るわけが――」



 十分後。



 なんとそこにはバニーガールの服を着てくつろぐ武士の姿が!!!!



「きつい」


 バニガ衣装が武士の筋肉の圧に耐えきれず今にも破裂しそうだ!! 網タイツからミシミシ音が聞こえる!!!!

 ちなみに武士がコスプレしている原因は、私にじゃんけんに負けたからです。


「どうだ?」


 いやあ……どの角度から見ても満遍なくキツイっすね……。

 だけどちょっと感慨深いものがあるよ。なんせ数年前の不況さえなければ私にも後輩がいたはずで、お前もこんな服を着なくて済んだのかなと思えば……。

 なんだこのクソみてぇなバタフライ・エフェクト。


「罠にかかった気分だ」


 誰も幸せにならねぇ……。




 なお忘年会は、武士がインフルエンザを発症したことにより自動的に欠席となりました。誰がどんな衣装を着たのかは怖くて聞けていません。もう二月なのにな。

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