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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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ティッシュ

 武士が現代にタイムスリップして驚いたことの一つに、紙の消費量があるという。


「いやぁ、某が住んでいた場所でも紙はよく使っていたんだがな、ここはその比ではないぞ。特にこの“ちっしゅ”。いくら鼻をかんでも痛くならん上に、こんな上等にできておるのに使い捨てときたもんだ。初めて見た時には実にたまげた」


 そうだよな。

 来たばかりの頃のお前、鼻かんだティッシュも乾かしてたもんな。

 ティッシュ取ってくれと頼んでそれが出てきた時には、ほんと窓から放り出そうと思ったよ。


 武士は、そんな私の思いも知らずいつもの箱ティッシュをしげしげと眺めている。それから、奥にある別のティッシュ箱に目を移した。


「……しかし未だに、この“はなせれぶ”とやらは、アレだな……使うのを躊躇うな……」


 わかる。

 それは私も躊躇う。


 むしろ使うんじゃねぇぞ。風邪ひいて永遠に鼻水出る時しか、その鼻紙様の出番は無いんだ。


 鼻紙様というか、もう鼻神様だから。


 そう説くと、武士は心得た様子で頷いた。


「分かっておる。実は某、はなせれぶを使いたいが為に、風邪をひくのを少し楽しみにしておるのだ」


 呑気な武士である。


 だが果たして、よく食べよく眠り、よく鍛錬する武士に寄ってくる風邪菌などいるのだろうか。


 倒れられたらそれはそれで迷惑なので、どうか鼻セレブを使うことが無いようひっそり祈ったのであった。

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