表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
402/679

夏祭り1

 そういや武士を連れて夏祭りに行ったわけですよ。


「某が浮かぬ場所のひとつ!」


 ただ浮かれてるように見えるだけだと思うな。いややっぱそれなりに浮いてるわ。今道ゆく浴衣の姉ちゃんが二度見したもんな。お嬢さん、もしや生武士は初めてで?


「心なしか屋台が増えておるような気がする」


 うん、昨今感染症の影響でお祭り自体少なかったからね。久しぶりにお祭りらしいお祭りを見た気がする。

 でもマスクは外すなよ! お前まだ投薬中なんだから!


「合点承知!」


 ほんとにわかってんのかなぁ……。


 周りのお客さんの迷惑にならぬよう、筋肉の塊は小走りで屋台を見て回っている。そんな武士に逐一追いつくのが面倒で少し離れた場所から見守っていたら、速攻私を見失ったらしいヤツの声で「ぬおおおおお大家殿ぉぉぉぉぉ!!!!」と雄叫ぶのが聞こえた。ので、やむなくピカピカ光る猫耳カチューシャを買って目印がわりに装着することになったのである。



 私が。



 なんでだよ!!!!



「これなら見失わぬ!」


 意気揚々と言う武士であるが、お前目の前にいる浮かれリーマン見えてる? これ本来女児がつけるやつだよ? 私の頭ギチギチいってんだけど。


「では行ってくる!」


 聞けよ!!!!


 聞くわけなかった。武士は小走りで屋台巡りを再開した。

 ……まあ、いいだろう。ここ最近、武士は病気のせいで我慢しなきゃいけないことも増えていた。台風や大雨のせいで外出もままならなかった。お祭りは溜まったフラストレーションを発散するいい機会に違いない。

 それにこれで雄叫ばれるリスクも無くなったのだ。安心して屋台を見て回れ――。


『ピンポンパンポーン。迷子のお客様のご案内をいたします。浴衣にちょんまげ頭の成人男性……』


 なんっっっっっっでだよ!!!!!!


 こうして私は案内所まで全力疾走するはめになったのである。そう、頭に愉快なカチューシャを装着したまま――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] (*´ー`*)マスクつけた生武士は、正直、初めてじゃなくても二度見すると思います。 口裂け女並みのポテンシャルを感じます。 とち狂った猫男の娘がそばにいればなおさらかと。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ