子守武士
武士が、時折姉上に呼ばれて子守に行くようになった。
「今日も行ってきたぞ」
本日の夕食はカレーです。もさもさもりもり食べながら、武士が成果報告をしてくれます。
「赤子がぐずり始めたのでな。両横腹のあたりを、こう、手でさすっておったのだ」
ほうほう。
「すると、やおら落ち着き始め……静かに虚空を見つめながら……」
うんうん。
「けぽぉっ、と……吐いたのだ……」
そうか……。
腹が……苦しかったのかな……。
「大量に……吐いた……」
びっくりしたね……。
「先日の大家殿を思い出した……」
どこぞの酔っ払いのことは思い出さなくていいんだよ! それにあっちはちゃんと私自身で処理してただろ!
まあ、吐いたならすっきりしたんじゃない? その後は無事寝ただろ。
「否。赤子の目はパッチリと覚め、いよいよ甲高い声で泣き始めた」
おやおやおやおや。
「ところで最近は泣き方も堂に入ってきてな、ようやく人の子らしくなってきたといったところだ」
生まれたての時は一目見て「あ、これ思考能力まだ無いな?」って思ったもんな。
「うむ。加えて、物を目で追うようにもなってきたのだ」
追視ってやつだっけ? 目が見えるようになってきたのは嬉しいね。
「試しに焼肉のタレを見せたら、じっと追っていた」
試すにしてもモノは選びな?




