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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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ランドセル

 そういえば先日、武士用の鞄を買いに行った。これまでは私が使わないトートバッグなどを使っていたが、もしそれも私が使う用事ができると武士のものがなくなってしまうのだ。小さな巾着袋にパンパンに荷物を詰めて出かけることも、しばしばだった。

 ゆえに、彼専用の鞄があってもいいかと考えたのである。武士も大喜びで、何度も私に礼を言ってくれた。


 で、店に来てみたのであるが……。


「これがよい!」


 武士が選んだのは、真っ赤なランドセルだった。


 来年、入学しちゃおっか。


「ぬ? これは稚児向けなのか? しかし非常に丈夫であるぞ。大きさの割に軽いし、背中にもぴったり合いそうである」


 実際高機能なんだよね、ランドセル。でも絶対背負ってみようとするなよ。お前ムキムキで肩幅あるから、腕通した瞬間ランドセルが弾け飛ぶぞ。


「しかし、惜しい。たくさん荷も入りそうである……。大人用のものはないのか?」


 どうだろう? ダメ元で店員さんに聞いてみよっか。


 聞いてきましたが、ダメでした。一応大人向けにランドセルと同等の機能を有した鞄はあるそうですが、武士の望むピッカピカ感はなかった。色と形が大変落ち着いていた。


「ならぬならぬ! この赤くて大きな紋章があるものがよいのだ!」


 もはや駄々っ子である。ちょんまげ成人男性がやってるんだから洒落にならねぇな。

 はいはい、もっと年相応の鞄選ぼうな。周りのお子さん(対象年齢)も見てるから。今のお前、指差されて「あれ何―?」って言われてるから。


「んぬううううう!」


 あとね、ランドセルは予算的にもオーバーなのよ。もっとお手頃価格のにしてよ。


「ぬああああああ!」


 結局、夜でもびっくりするぐらい目立ちそうな真っ赤なリュックサックを買いました。武士は最後の最後までランドセルを粘っていましたが、それは無理なので諦めてもらいました。

 しかし、奇跡は起こるものです。ずっと私達の攻防を見ていた店員さんが、あとでこっそり武士にあるものをプレゼントしてくれたのでした。


「赤き小こき、らんどせるー!!」


 小さい小さい赤ランドセルのキーホルダーを手に、武士はニッコニコです。よかったね、武士。私は二度とあの店に行けないなと思いました。


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― 新着の感想 ―
[一言] なにげに大家さんの二度と行けないところが大分増えてる気がするwww
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