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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
389/590

満員電車

 この時期のニトリ、ドン・キホーテ、電車の混み具合は異常。


「そんなに酷いのか」


 武士が目を丸くして言う。いや、電車に関して言えばいつも通りに戻ったってとこなんだけどね。三月後半の空き具合に落ち着いた心になっていた私としては、やっぱ改めて乗車率100%超えを感じてしまうというか。


「ん、100ぱーせんと? 確か100ぱーせんと時点で、満員という意味なのではなかったか?」


 うん、そうだよ。不思議だね。電車って簡単に限界超えるから。


「そんなものに日々乗って運ばれる大家殿とは、一体」


 奇異な目で見るんじゃない。労え。


「日本人とは、一体」


 つまりお前らの末路だよ。


「だが体験してみたい!」


 えーーーーーーーーばかーーーーーーーー。


「馬鹿ではない! 実は某、前々より満員電車が気になっておったのだ。だが恐ろしき流行病により、やむなくひっそりと身を潜めざるをえなかった……!」


 そう思えば、お前なかなかヘビーなタイミングで現代来ちゃったよね。


「だが、今こそ!」


 やめろーーーーーーーー。

 やめなさい。あんなもん好き好んで乗るもんじゃないよ。


「そうなのか?」


 つーかそのノリで乗車率を上げにくるんじゃねぇ。


「手厳しいのう。しかし大家殿の言も一理ある。日本の末路の者らに面倒をかけてはいかんし、ここは引きさがろう」


 おう、頼むよ。


「ゆえに、気分だけを味わうことにする」


 気分?


「うむ。つまり電車の中はぎゅうぎゅうなのだろう? ならばこうして某の上に、何重にも布団やタオルをかけ……」


 お、おう……。


「するとあたかもどら焼きの餡のように、某がほら」


 ほらって言われても。


「ぐう」


 寝た! じゃあそれ全然満員電車体験じゃねぇよ! そんな快適なもんじゃねぇから、あれ!


 そして数十分後、汗だくになった武士が布団の下から這い出してきたのである。最近気温も高くなったからなぁ。

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