満員電車
この時期のニトリ、ドン・キホーテ、電車の混み具合は異常。
「そんなに酷いのか」
武士が目を丸くして言う。いや、電車に関して言えばいつも通りに戻ったってとこなんだけどね。三月後半の空き具合に落ち着いた心になっていた私としては、やっぱ改めて乗車率100%超えを感じてしまうというか。
「ん、100ぱーせんと? 確か100ぱーせんと時点で、満員という意味なのではなかったか?」
うん、そうだよ。不思議だね。電車って簡単に限界超えるから。
「そんなものに日々乗って運ばれる大家殿とは、一体」
奇異な目で見るんじゃない。労え。
「日本人とは、一体」
つまりお前らの末路だよ。
「だが体験してみたい!」
えーーーーーーーーばかーーーーーーーー。
「馬鹿ではない! 実は某、前々より満員電車が気になっておったのだ。だが恐ろしき流行病により、やむなくひっそりと身を潜めざるをえなかった……!」
そう思えば、お前なかなかヘビーなタイミングで現代来ちゃったよね。
「だが、今こそ!」
やめろーーーーーーーー。
やめなさい。あんなもん好き好んで乗るもんじゃないよ。
「そうなのか?」
つーかそのノリで乗車率を上げにくるんじゃねぇ。
「手厳しいのう。しかし大家殿の言も一理ある。日本の末路の者らに面倒をかけてはいかんし、ここは引きさがろう」
おう、頼むよ。
「ゆえに、気分だけを味わうことにする」
気分?
「うむ。つまり電車の中はぎゅうぎゅうなのだろう? ならばこうして某の上に、何重にも布団やタオルをかけ……」
お、おう……。
「するとあたかもどら焼きの餡のように、某がほら」
ほらって言われても。
「ぐう」
寝た! じゃあそれ全然満員電車体験じゃねぇよ! そんな快適なもんじゃねぇから、あれ!
そして数十分後、汗だくになった武士が布団の下から這い出してきたのである。最近気温も高くなったからなぁ。