うぐいす
春の陽気が外でのさばっている。
ぼんやりと三階の窓から下を見下ろすと、茶トラ野良猫が自分の股を舐めていた。股じゃなくて腹か? わからん。猫飼ったことないからわからん。なお今日の私は振替休日を取っているので、大っぴらに休んでいる。
「大家殿―! うぐいすの声を聞いたぞ!」
延々と猫を眺めていたら、弁当を買いに行ってくれていた武士が帰ってきた。
「二羽おった! 二羽!」
しかも一羽じゃなかったらしい。よくわかったね。視力すげぇね。
「否。二羽分の声がしたのだ」
ほう。
「一羽目の鳴き声は、それはそれは見事なうぐいすのものでな。ホゥ~ホケキョとお手本のような声であった」
へー。じゃあもう一羽は?
「フピョキョッ」
?
「フピョッ……ケキョッ、ピョッ! ホペッピョ!」
???
「違う、突如にして某の頭がおかしくなったのではない。そのような目で見るな。これはそのうぐいすの鳴き真似だ」
ああ……確かうぐいすって鳴き方の練習をするんだっけ。下手っぴな子もいたもんだね。
「だが懸命に練習してるのが伝わってきた。きっといずれそのうぐいすからも、見事な声を聞ける日がくるだろう」
そうだね。楽しみだね。
「来年にはなんとか……」
今年はちょっと間に合いそうにないの?




