表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
374/682

会社に猫

 先日、土曜日出勤した時である。

 先輩が、私服で会社にやってきていた。

 いや、全然いいのだ。今日はあくまで社内の事務仕事だけなので、外に出る用事はない。加えて休日出勤なのだ。私さえ目をつぶれば、先輩は誰にも咎められないだろう。


 だが、先輩の服から「にゃー」とか細い声が聞こえてきたら話は別だ。


「……」


 先輩がこちらを向く。でっかいパーカーのポケットから、黒白のハチワレ猫が顔を出していた。

 二匹、いた。


「……まだ、子猫でさ……」


 ……はい。


「……旦那さんも、偶然仕事でさ……」


 ……はい。


「……一匹、抱っこさせてあげるから……」


 はい、黙っておきます。


 膝の上にイキモノを乗せてする仕事は格別である。しかし、なんで会社に猫を連れてきちゃいけないんだろうね。猫側がいいって言えば連れてきていいルールに変わらないかな。無理か。二時間ぐらいで終わる仕事が半日以上かかったもんな。なんせ猫ちゃんと離れがたくて。


 そのことを武士に伝えたら、死ぬほど羨ましがられた。


「ずるい!!!!!」


 ずるい言われても。


「なんぞその猫と戯れるだけで銭のもらえる仕事は! ずるい!!」


 いやいや、本業のほうもしてたよ。それに猫がいたのもたまたまその日だけだって。いつもそうなわけじゃない。


「ぬう。猫と戯れるだけで銭がもらえたら良いのに……!」


 無理だろうなぁー。猫ちゃんお世話してお金がもらえる仕事は、必ず命の責任がのしかかってくるからね。


「うむ、某も虫の良いことを申してしまった。心より侘びたい」


 おお、真摯だ。でも気持ちはわからんでもないよ。私はてっきり、猫を飼いたいと暴れ回られるかと。


「失う痛みを思えば勇気が出ん」


 わかるー。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ