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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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瓶の蓋

 江戸時代に、ガラス瓶はなかった。いや、ペリーが来た時に海にポイ捨てしていったガラス瓶を使ってたことはあったみたいだけど少なくとも商品となり流通するまでには至っていなかった。

 なので、当然武士にとっては未体験なのである。


 瓶の蓋が開かないということは。


「ふんっっっぬ……ぅおおおおおお!」


 顔を真っ赤にして、ジャムの蓋を開けようとしている。ちゃんと回して取ろうとしているだけ成長したのだ。最初は蓋を取っ手部分だと思って、そこ掴んで床に叩きつけてたからね。くまのプーさんでももうちょい手心加えるぞ。

 蓋のからくりがわかってからは、しばらく瓶の流線型を楽しそうに指でなぞっていた。「滑り台」とか言ってシルバニアファミリーの赤ちゃんを沿わせてた。なんでも楽しそうでなによりだ。


 だが、たった今ガラス瓶の蓋は武士に牙を剥いた。


「ぬっううううん! 開かぬ!! 某は! いちごのダムが食べたいだけなのに!!」


 ジャムね。ダムはどでかい貯水ゾーンね。


「いちごのダムに行きたい!」


 それはちょっと行きたいかもな……。開きそう?


「なんのこれしき!!」


 よしよし、そんじゃもうちょい見てみよう。その間私はパンをもう一枚焼いて……。


「ぼぶさっぷ!」


 ギブアップって言いたかったのかな。振り返ると、武士がゼーゼーと肩で息をしていた。朝から元気なもんである。

 よし、貸してみな。私がなんとかしてやるよ。


「ええ〜? 大家殿がぁ〜? 最近寒いだの天気が悪いだの言って鍛錬を怠っておる大家殿がぁ〜?」


 ちょんまげが煽ること煽ること。いいから貸しなって。

 ……ふんっ!


「ぬおおっ!? 開いた!!?」


 ま、ざっとこんなもんよ。ほれ、ジャム食べな。


「ぬうう……? ぬううううう……?」


 私とジャムを見比べてんじゃない。何も出てこないよ。


「……先ほど手の中に握り飲んだ、その輪ゴムは……?」


 ……。


「……」


 瓶の蓋が固くて開かない場合は、蓋部分に輪ゴムをつけたら開きやすくなる。生活に役立つ裏技です。みんな、やってみてね!!

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