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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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入院して二週間ほど経ったわけだが

 武士の入院生活も二週間目に突入してしまった。なかなか薬の効きが悪く、検査結果も思うようにならない。

 一方武士本人はというと、三食しっかり栄養士さんによって管理された食事をし、朝は検査のために六時半に起き、夜は九時に眠るという生活を続けていた。その結果――。


「このままでは健康になってしまう……」


 心なしか顔ツヤが良くなった気がする武士が、そうこぼした。


 そのために来てんだよ。


「体が思うようにならんというのは、不便だ」


 武士の利き手は今、諸事情により使えない。当然箸はうまく持てないわけで、食事の際にはスプーンとフォークの使用を余儀なくされている。


「しかし、匙がかように便利なものだったとは。某、もう一生これでいい」


 某でんきねずみが描かれたスプーンで、嬉々として味噌汁を飲んでいるらしい。仮にも武士がそれでいいのかと思うけど、ストレスがないに越したことはないだろう。


「最近はすっかりお医者殿やかんごし殿の顔も覚えてな。言葉を交わすことも増えた」


 武士は要安静状態のため、一日中ベッドの上で寝転んでいる。二時間に一度は検査や診察があり、その際に少し会話するのだそうだ。

 いいことだ。最近はどうしても感染症対策で面会や他の患者との交流も制限されているので、話し相手は貴重な存在である。

 何話したの?


「お医者殿の背丈は、175せんちだった」


 何話してんの?


「もっと欲しかったと言っておった」


 だいぶフランクな人だね、お医者さんも。




 そうして一昨日、ようやく薬が効いてきたと検査結果でわかったのである。来週月曜日に検査して、数値が良ければ退院できるそうだ。お医者さんや看護師さん、薬と現代医学には感謝してもしきれない。

 しばらくは薬の副作用で免疫が落ち、食事にも少々制限がかかる。それでも今よりは格段に過ごしやすくなるだろう。

 本当に良かった。心配してくださった皆様もありがとうございました。


「そういえば、UNOを覚えた。あれは楽しいな。江戸にも持って帰りたいし、某が退院するまでに買っておいてくれ」


 色々ツッコみたいことはあるけど、誰に教えてもらったの???

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