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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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ちょんまげがいた

 生きるとは、自分の運命を発見することである。

     ――アルマン・サラクルー



 めっきり肌寒くなってきた今日この頃。こたつを出すタイミングのことしか考えていなかった私の時間は、突如部屋に飛び込んできた武士によって遮られた。


「丁髷がおった!!!!」


 まずは手洗いうがい! え、何、チョンマゲ!?


 チョンマゲ!?


 わけがわからんが、手洗いうがいをしない者と交わす言葉は無い。温かいお茶を飲み一息ついた武士は、ようやく口をきくことを許された。


「いつものように散歩をしておったらな、頭を丁髷にした者がおったのだ」


 そんでとんでもない発言をするものである。

 えー、そんなの現代日本にいるはずないだろ。鏡でも見たんじゃないか?


「おったもん! 丁髷男おったもん!」


 そう言われてもな。


「某見たもん!」


 トトロ見たメイちゃんみたいに言う……。


 いやでも、それぐらいレアなんだよ、現代日本における武士ってのは。何ならお前にしか見えなかったまである。武士の時にだけあなたに訪れる不思議な出会い。


 とりあえず、せがまれるがまま某青い鳥のSNSでエゴサしてみた。まあ大概、これで出てくるのは大体隠し撮りされた武士である。ちなみに、インスタのほうなら満面の笑みの武士と写ってるギャルとか出てきたりする。このコミュ力オバケめ。

 すると、二、三回スクロールしないうちにチョンマゲ頭の男が出てきてびっくりした。それだけじゃない、ちゃんと和装までしているではないか。そんな男が一人だけじゃなく何人もいて――


 何事だ、これは。まさか、武士以外にもタイムスリップしてきた武士がいるというのか!?


 けれどそんな私のおぞましい予想は、スマートフォンに表示された日付を見るなりあっさり瓦解した。


 本日は10月31日。


 ハロウィーン。


 ――この日は、大人も子供も仮装してはしゃぐ日である。私はやっとそう気づいたのであった。





 そんなわけで、ハロウィーンを過ぎた今日という日においても、武士は一人チョンマゲとして堂々街を闊歩しているのである。いつか仲間ができるといいな。

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― 新着の感想 ―
[一言] 「しょうがのむし」がとうとう武士と遭遇したのか…?!と、ドキドキしました。違った…。
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