表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
35/676

 なんだか最近、突然夜が寒くなってきた。


 そうなると、鍋が美味くなってくるのは必然である。


「大家殿、これが約束の品だ」


 そんなわけで、武士に鍋の材料を買ってくるよう頼んだのだ。

 神妙な顔でポムポムプリンのエコバッグを差し出す武士に、私は鍋奉行としてしっかり頷いた。


 まず、一品目。


「長ネギである」


 よし合格。次は?


「鶏肉である」


 つみれ美味しいよね。他は?


「えのき茸、豆腐、もやし、白菜」


 すごい、すごいぞ武士。完璧じゃないか。

 私はバシバシと武士の肩を叩いて、労をねぎらってやる。


 だが武士は、まだ全ての材料を出したわけではなかった。


「大家殿、これを……」


 袖の下の小判のごとく、そっと武士はある袋を差し出す。


 お前……これは、まさか……。



 薄切り餅……!?



「絶対に、美味い」


 分かる。絶対美味いわ。


「そして、らぁめん」


 バッカお前それ神が与えし供物じゃん。

 腹いっぱいなのに不思議とスルスルイケるヤツじゃん。


 よし、それではキムチ鍋と洒落込もうじゃないか。あんまり辛すぎるのは武士が苦手かもしれないので、牛乳と味噌を足してやる。まろやかになるし、コクも出るしでまぁ白米が進むんだコレが。


 案の定、武士は恐ろしい勢いでかっこんでいた。いやー、寒い夜に囲む鍋は本当に美味いよね。


 そんでさ、お前にちょっと聞きたいことがあるんだけど。

 私がここで育ててた肉、知らない?


「沈んでいたから食べた」


 どういう理屈?


 代わりに武士が育てていた餅を奪い取った。殴り合いの喧嘩に発展しかけたが、ラーメンを鍋にぶち込んだら自然と気持ちが収まったので、やはり鍋は平和の象徴に違いない。


 そんなことを思いながら、炭水化物をもりもりと取って明日への元気を蓄えたのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] お鍋、美味しいですよね〜(*´꒳`*) 今日も癒しをいただきました!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ