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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
347/679

いきなり寒いじゃん

 朝起きたら、寒かった。

 “武士がいる”もそんな導入で始まる季節になりました。


「いきなり冬」


 朝の鍛錬もどこへやら、布団に丸まってミノムシみたいになった武士が言う。なんとなく足で軽く蹴ってみると、「右へ参ります」と言いながら左に転がっていった。人間突然寒くなると、右と左もわからなくなるようだ。


「こたつ!」


 そして壁まで行き着いた所で単語を発した。


「もしくは鍋!」


 何言いたいかはわかるけどさ。

 でもあれよ。また暑くなるらしいよ。


「大家殿ぉ」


 私のせいじゃねぇよ。私のせいなわけないだろ。


「しかしかように気温の変容が激しければ、皆体を壊してしまうぞ。なんとかできんのか?」


 えー……?

 気温の変化が一定だったらいいの? 一年中?


「否。半年に一度は季節の変化があってほしい」


 わがままだね、お前は。でもそんなご希望に沿える案が一つだけあるよ。


「なんぞ?」


 地軸をずらして真横にする。


「ちじく?」


 地球って実は少しだけ傾いてて、そのおかげで四季が生まれてるんだけどね。これが真横に傾いてしまうとそんな甘いものは吹き飛んで、日本は夏の間一切太陽が沈まなくなる。


「なんと」


 当然今の猛暑が涼しいレベルで暑くなるよね。この現象はずっと日本が太陽のある面に晒されるせいで起こるんだけど……。ところで地獄は夏だけじゃない。冬にも来る。


「何が起こるのだ」


 一日中、太陽が昇らなくなる。


「ひっ」


 すると何が起こるか。まずとんでもなく寒くなるな。ありとあらゆるものは凍りつき、大吹雪は日常茶飯事となる。


「ぬう」


 こうなるともう気温差で体調を崩すどころじゃない。人々は日々を生き延びるので精一杯だ。


「某は……ぬるま湯に浸かっておったのか……!」


 ようやくわかったのか。それじゃ今の自分の環境に感謝し、地球の未来のために何かできるかこれから考えてみよう。


「わかった!」


 こうして私は、面倒くさいこたつの設置を先延ばしにすることに成功したのである。


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