表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
343/682

IHコンロ

 最近多忙なのと特筆すべき事件も起こっていないという理由で、IHコンロを買った話をさせていただければと思います。それほど大した話でもないけど。


「がすこわい」


 現代日本に来て数年経ちますが、武士は未だにガスコンロを扱えないでいた。


「空気に火がつくとはどういう理屈ぞ。ならば吸ってしまったら某の腹の中で燃えるのか。こわい」


 吸った場合、体内で発火する以前に酸素欠乏っつって大変危険な状態になる可能性が……まあいいや。便利なんだけどね、ガスコンロ。マシュマロとか焼けるし(重々お気をつけください)。

 だけど長く家にいるのは武士なんだし、そろそろコンロを便利に使ってもらいたい。そんな親切心から我が家にIHコンロを導入することに決めました。


「ビリビリのえれきてるが火になるのか……!?」


 武士はますます混乱していましたが、まあいいでしょう。実際使ってみれば分かってもらえるはずだ。

 まずはご対面。武士の前に買ったばかりのIHクッキングヒーターを差し出してみた。


「……」


 武士は正座をしてじっと見ていたが、やがてそーっと指を突き出しツンとつついた。


「熱くない」


 そりゃあまだね。コンセントに繋がなきゃだから。


「……」


 途方に暮れた小動物のような目で武士が私を見てきたので私がコンセントに繋いでやり、冷めた味噌汁の入った片手鍋を持ってきてやった。それからピッとスイッチを入れる。武士がビクッとした。


「……ぬくくなったらピーとか言うのか?」


 ヤカンじゃないしなぁ。もうちょい高い機種ならそういうのもあるかもだけど、お手頃価格なIHコンロにそんな機能は無いよ。


「ならばどうやってぬくくなったかを判断するんだ」


 ガスコンロと一緒だよ。沸騰したかどうかで見る。


「味噌汁は沸騰させてはならぬ!」


 ごめんて。


 そんなこんなで紆余曲折あった結果、今では武士も味噌汁を温め直すことができるようになりました。拍手!


「また江戸に持って帰らねばならぬ物が増えた」


 そうだな、その時までに江戸に電気通ってるといいんだがな……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ