IHコンロ
最近多忙なのと特筆すべき事件も起こっていないという理由で、IHコンロを買った話をさせていただければと思います。それほど大した話でもないけど。
「がすこわい」
現代日本に来て数年経ちますが、武士は未だにガスコンロを扱えないでいた。
「空気に火がつくとはどういう理屈ぞ。ならば吸ってしまったら某の腹の中で燃えるのか。こわい」
吸った場合、体内で発火する以前に酸素欠乏っつって大変危険な状態になる可能性が……まあいいや。便利なんだけどね、ガスコンロ。マシュマロとか焼けるし(重々お気をつけください)。
だけど長く家にいるのは武士なんだし、そろそろコンロを便利に使ってもらいたい。そんな親切心から我が家にIHコンロを導入することに決めました。
「ビリビリのえれきてるが火になるのか……!?」
武士はますます混乱していましたが、まあいいでしょう。実際使ってみれば分かってもらえるはずだ。
まずはご対面。武士の前に買ったばかりのIHクッキングヒーターを差し出してみた。
「……」
武士は正座をしてじっと見ていたが、やがてそーっと指を突き出しツンとつついた。
「熱くない」
そりゃあまだね。コンセントに繋がなきゃだから。
「……」
途方に暮れた小動物のような目で武士が私を見てきたので私がコンセントに繋いでやり、冷めた味噌汁の入った片手鍋を持ってきてやった。それからピッとスイッチを入れる。武士がビクッとした。
「……ぬくくなったらピーとか言うのか?」
ヤカンじゃないしなぁ。もうちょい高い機種ならそういうのもあるかもだけど、お手頃価格なIHコンロにそんな機能は無いよ。
「ならばどうやってぬくくなったかを判断するんだ」
ガスコンロと一緒だよ。沸騰したかどうかで見る。
「味噌汁は沸騰させてはならぬ!」
ごめんて。
そんなこんなで紆余曲折あった結果、今では武士も味噌汁を温め直すことができるようになりました。拍手!
「また江戸に持って帰らねばならぬ物が増えた」
そうだな、その時までに江戸に電気通ってるといいんだがな……。
 




