眠れぬ夜の物語
それはある晩のこと。気持ちよく眠っていた私だったが、突然ずしりと腹のあたりが重たくなった。体は動けず、息苦しい。
変だなー怖いなーと思ってゆっくりと目を開けてみたんですね。するとそこにいたのは――!
「眠れん」
居候の筋肉だるまだったんです!
降りろや!
「眠れん〜」
ゆさゆさ、じゃねぇんだよ。子供か、お前は。何一つかわいくねぇし何なら金縛りかなってちょっとビビったし。
「眠れるような努力をしてくれ」
私が??? お前じゃなくて???
「子守唄とか寝物語とか」
なんで私がしなくちゃいけないんだ……。
「某を助けると思って」
私の善性に賭けすぎだろ。嫌だよ。自分で何とかしろ。
「ぬん……」
あっばばばばばやめろやめろ体重をかけんなわかったわかったからやめろバカ!
じゃあ寝物語でもするとするか。何がいい? 『私が昔出会った変な人シリーズ』?
「それも好きだが笑って寝られなくなるから別のが良い」
あー、そう。逆にリクエストある?
「心地よくばーどふるすいんぐな絵本風が良い」
ばーどふるすいんぐ……ばーどふる……ハートフル。心温まる物語って感じか。はいはい。
じゃあ『ピンクのふわふわウサギくん』。
「うぬ」
降りて布団に横になりなさい。
「うぬっ」
ここからは遠い山の中。十匹のウサギの兄弟がいました。
「ぬん」
返事しなくていいよ。目ぇ閉じて聞いてな。
十匹の兄弟はとっても仲良し。一番上のお兄ちゃんはしっかり者。兄弟みんなのことが大好きです。二番目ウサギはお姉ちゃん、優しい目をした素敵な子。お料理上手でにんじんケーキが得意です。
「……」
三番目ウサギはかしこい男の子。どこに行けば美味しい草が食べられるかなんでも知っています……。
「ぐー」
四番目ウサギは不眠がちの子。既にいびきをかく武士に言います。「これで入眠できる程度の眠れなさで人を叩き起こしやがって」と。
「ぐー」
起きたら絶対ヘッドロックだからな、お前。