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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
334/681

海へ行こう

 有給を取った。そのことを武士に伝えたら、買ったばかりの海パンをフェスみたいにぶん回しながら「海へ!!!!」と答えた。

 じゃあ、行こっか。そんなこんなで海に来た。


「海ーーーー!!!!」


 自宅から真っ赤な海パンをはいてきたので準備は万端である。準備運動もそこそこに、武士は真っ青な海へと飛び出した。


「熱い!!!!」


 だがすぐにつま先立ちで暴れ跳ね始めた。砂浜が熱かったらしい。だからあれほどサンダルを履けと。

 履かせてやって、再度解き放つ。武士は迷いなくじゃぶじゃぶ海に突き進み、一気に肩まで浸かった。迷惑な温泉客か?


「口がしょっぱい!」


 海ってそういうもんだから。

 一応夏休みとはいえ、今日は平日。人手も普段よりは少ないようだ。


「大家殿は泳がんのかー!?」


 私がレジャーシートに腰を下ろしているのを見た武士が、波間から大声を張り上げる。うーん、泳ぐのはいいけど後でシャワー浴びなきゃいけないのがだるいんだよね。何事もそうだ。後片付けの見える作業は極力やりたくない。


「つまらぬ人生!!」


 断言するな。お陰様でそこそこ愉快だわ。


 そうやってぼんやり武士を眺めていると、やがて奴は思い出したように海から上がりこちらへとやってきた。

 何?


「見るがいい。綺麗な石を見つけた」


 あー……ほんとだ。緑色が綺麗だね。


「抹茶が練り込まれておるのか?」


 そんなわけねぇんだわ。


 自慢できて満足したのか、武士はまたいそいそと海に還っていった。


 ――空が青い。海が広い。風が暑い。潮風が体にまとわりつく。額から汗が勝手に落ちてくる。


「大家殿ーっ!」


 何。


「見ろ! 貝!!」


 貝かぁ。


「あとメダカがおった!」


 メダカいたの!!? マジで!!?

 あとで調べたところ、メダカは水への順応性がとても高いから割と海であろうと住んでしまえるらしい。まあ武士が他の魚と見間違えた可能性もあるけど。

 でも流石に気になって私も海へと赴いた。着替え持ってきてないから、膝ぐらいまでしか浸かれなかったけど。武士は髷まで濡れてたけど。

 海に浸かるの、久々だなぁ。足の裏に小さい石が突き刺さって痛い。


 結局結構海を楽しんで、我々は帰途につくことになった。


「ふんどし忘れた」


 だが武士が下着を忘れたせいで、海パンが乾くまで武士を三十分ぐらい天日干しにせざるを得なくなったことをここに記しておく。

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