327/680
太っ……
風呂上がりに、武士が落ち込んでいた。
「……」
自分の腹を掴み、こっちを見ている。いや見るなよ、何なんだよ。
「……太った……」
知らんがな……。
「ここ三年ほど、ずっとメシが美味いのだ。手を伸ばせば菓子もあるし、冷やき箱を開ければあいすもある。無論某も鍛錬はしておるのだが、暑き日も続くゆえついつい己に甘えてしまう日もある」
うん。
「……」
だからこっちを見るなって。悟って、じゃねぇんだよ知らんよ。
「食うても食うても減らんどら焼きが欲しい」
そこは食べても食べても太らないどら焼きだろ。滲む欲望に太った原因が透けて見えてんだよ。
「こうなれば最後の手段」
何?
「おやつの回数を減らす。五度から四度に」
元より多いな? せめて二回ぐらいにしといてよ。
「ほれ、大家殿も摘んでみろ。某の腹肉」
そのままちぎって捨てていいなら……。
「ダメに決まっておる!」




