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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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しっけすいとるぞうさん

 それはある日、何気無く押し入れを見た時のことである。


 なあなあ武士さん。


「ぬんぬん」


 明日さ、水とりぞうさん買ってきてくれない?


「ぞうさん!? かようなものが店におるのか!?」


 うん、いる。実は大抵の店にはいる。見つけられなかったら店員さんに聞いてくれ。頼んだよ。


「まことか……! だが、飼えるのか? 確かにここは二階であるゆえ、窓から餌はやれるかもしれんが、なんせ暑さが……!」


 小さいぞうさんだから室内でいけるよ。押し入れに入れてもいいぐらい。


「それはそれで窮屈な思いをさせるではないかー!」


 明確に何かを誤解していたけど、放置して寝た。やっぱ人間、眠気には勝てないからね。

 そして翌日、武士はウキウキで買い物に向かった。


 結果。


「生きとらんではないか!!!!」


 家に帰ったら、水とりぞうさん(三個セット)を前に武士が崩れ落ちていた。本物の象と勘違いしてるだろうなとは思ってた。思ってたけど、それにしたってツッコミの着眼点が斬新だなぁ。

 そりゃそうだよ。それって除湿剤――湿気取ってくれるだけのやつだからね。


「湿気ぇ? 確かにじめじめしておるかもしれぬが、目に見えぬ空中のものをどうやって吸い取るというのだ」


 そこはその……知らん。とにかく湿気を吸い取ってくれるんだ。ほら見てごらん。ここに水が溜まるようになってる。


「まことか?」


 まことよ。


「信じられぬ! この目で確かめてくれるわ!」


 こうして、ヘソを曲げた武士による水とりぞうさんの監視が始まったのであった。

 三日で飽きてたけど。


 で、実はこの話が三ヶ月前ぐらいのことなのだけど……。


「溜まっとるではないかー!」


 昨日、押し入れを開けた武士が叫んでいた。朝っぱらから耳と心臓に悪い。

 たぷたぷさせながら持ってきたのを見れば、既に線の所まで水が溜まっていた。あー、こうなりゃ水を捨てて新しいの買ってこなきゃだな。


「ぞうさん! 疑って悪かった! おぬしは実に忠義者ぞ!」


 武士は役目を終えた水とりぞうさんとはしゃいでいる。心なしかパッケージのぞうさんも嬉しそうだな。私は「中の水は流し以外にこぼすな、飲むな。あと新しいぞうさん買っといて」と武士に言い残し、いつも通り出社したのだった。

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