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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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面倒い

 仕事から帰った今日の私は、完全に力尽きてしまっていた。


 ……面倒くさい。

 全部だ。全部が面倒くさいのだ。


 家事をするのが面倒くさい。立ち上がるのも面倒くさい。息するのも面倒くさい。


 こんな時、いつもなら武士が飛んできて私をつつき出すのである。彼としょうもないやり取りをしている内に少しずつ気力が回復し、やがて風呂ぐらい入るかと立ち上がれる程度にはなるのだが……。


「……」


 今日の武士は、少し離れた場所で私と同じくうつ伏せに倒れていた。

 どうやら彼も閉店してしまったらしい。


「……すまん、大家殿……。今日の某はな、頑張ったのだ。天気が良かったからな、布団を干し、敷物を洗い……。あと、少し遠出して、菓子を買ってきた。冷やき箱に入れておる」


 えらーい。武士、えらーい。


「大家殿もえらいぞ……。なんたってこんな時間まで勤めを果たしてきたのだ。しかもなんだ、毎日時間通りそれをこなしておるときた。日銭を稼ぐというのは、易いことではない。食わせてもらっている身、どんな言葉で感謝してもし足りぬ」


 おー、面と向かって言われるとちょっと照れるなー。


 武士もなー、ありがとなー。洗濯もありがたいし、買い物だってお前徒歩だから大変だったろー。


「ふふふふ」


 ふふふふふふふふ。


 ……。


 ……。


「……其、少し元気が戻ってきた」


 あ、やっぱり?

 なんか私もちょっと元気出てきたんだよな。


 まー、でもやる気は無いままなんだけど。


「大家殿、夕餉はもう某の買うてきた菓子にせぬか? 足りん分は、何か家にあるものを探して食べるとしよう」


 お、賛成。

 たまにはいいよな、そういう日があっても。


 武士が買ってきていたのは、なんかめっちゃでかいシュークリームだった。

 ちょっと信じられないぐらいでかかった。もうここまできたら菓子パンだろ。シュークリーム名乗っちゃダメだよ。


 だが、無事に腹は満ちたのであった。

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