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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
315/679

食に関しては右に倣えない

「皆に支持されるものが、自分にとって良いものとは限らない」


 昨晩自宅に帰ると、武士が神妙な顔をして正座していた。


「不安になるものだ。自分はこれを良いと思わないのに、周りはこぞって称賛する。よもやおかしいのは自分ではないか……そう疑ってしまいたくなるもの。しかし、某はこうも思うのだ」


 武士は、ゆっくりと顔を上げる。


「人は人、某は某」


 それで何の話なんすか。


「ぬ、おかえり申したか大家殿」


 ほいよ、ただいま。何について語ってたの?


「これだ。本日メシを作る気力が湧かんでな、店にて弁当を買ってきたのだが」


 おおサンキュー。助かります。


「先んじて味見をしてな」


 うん……いいよ。半分ぐらい減ってる気がするけどまあいいよ。


「蓋には『弁当大賞に輝きました』と書かれており、某大いに期待したのだ。さぞかし美味いものだろう、さぞかし支持を得たのだろうと。そう思い食してみたのだが……結果は、悲しきこと。食えども食えども某の舌は疑問を呈するばかりで、一つも喜ばなんだ」


 それは残念だったな……。

 好みの分かれるものってどうしてもあるからなぁ。嗜好品とか、文化ものとか、一定以上のレベルの食品なら特にそう。一番を決めたりするのって楽しいし、宣伝にもなるから一概に悪いとは言えないけど、多数決の一番と主観的な一番って完全には一致しないからね。

 それでも、この弁当は確かに他の誰かの舌に響いたものなんだ。作った人ももちろんの事……決して否定しちゃいけない。わかってるな。


「うむ、大家殿。心得ておるぞ」


 よし。

 そんじゃ私も食べるとするか。美味しそうじゃん、いただきます!


「……」


 ……。


 クソ不味いな。支持してる奴らみんな味覚地球外か。


「舌の根も乾かぬうちに大家殿!!!!」

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