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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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目が覚めると私は

 ある朝、不安な夢から目覚めてみると、ベッドの中で自分の姿が一匹の巨大なテントウムシに変わってしまっているのに気がついた。


 いやテントウムシて。


「まことカッケェではないかーーー!!!!」


 そして我が家に居候をかます、精神年齢小学二年生の武士が食いついた。


「大家殿! 大家殿の布団にでかきテントウムシがおるぞ! 大家殿! 大家殿ー!」


 私が見えないのか、すぐそばにいるのに。

 いや、見えてはいるのか。テントウムシに染まってるから気づかれないだけで。


「大家殿ーーーっ!!!!」


 残念ながらテントウムシは喋らないので、武士はただ叫び続けるだけである。ここでお隣さんから壁ドンをくらい、奴は大人しくなった。


「ぬーん、怒られてしもうた。ところでお主、名はなんと申すのだ?」


 何度も言うが、テントウムシは喋らない。武士は正座をしてワクワク待っていたが、物言わぬ私に残念そうな顔をした。


「まさか、名が無いのか……?」


 そう受け取っちゃうんだな……。もしかして江戸時代的な感覚だと虫は喋って当然なのか? デ○ズニーみたいな世界観なのか?


「では某が名付けてやろう。紅饅頭」


 そんでネーミングセンスをどこに落としてきたんだ、コイツは。


「よーし、紅饅頭! 早速某と都へ繰り出そうではないか!」


 武士がドアを開けて私を誘うが、丸々としたテントウムシがそんな細長い穴から出られるはずもない。ベランダなら体を縦にすればいけるかもだけど。


「む、出られぬのか? ああ、腹が減ったのだな! 待っておれ、某が美味な葉っぱを取ってきてやるぞ!」


 そう言うと、武士は全速力で走り去ってしまった。残された巨大テントウムシである私は、特にすることもないのでウトウトし始めていた。

 それから、どれぐらい経ったか。


「大家殿!」


 武士の声に、起こされた。


「何寝ておるのだ! 某の紅饅頭をどこへやった!」


 え……紅白饅頭が何って? 知らん……。お前が食べたんじゃないの?


「ぬうううん! 紅饅頭ー!」


 そう言いながら武士は、冷蔵庫を開けて饅頭を探していた。


 ……まあ、なんだ。

 そういう変な夢を見たというだけの話である。

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