表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
290/681

チョコの代わりにカレーとか

 バレンタインデーでしたね。

 昨今の感染症事情か私側の事情かとんと分かりませんが、とにかく一個も(身内からも)チョコが貰えませんでした。

 だから悲しみのあまり会社出ると同時に武士に連絡して、「高いチョコ食おうぜ!」ってスーパーに駆け込んだんですよ。他者に甘えるな。セルフで己を甘やかせ。


 殆ど撤去されてたわぁ、バレンタインコーナー。


「まあ……大抵の者は、前日かそれより前に買うだろうからな」


 これは、ピカチュウ柄の箱を抱きしめて離さない武士の発言である。


「スーパー側の怠慢ではない。大家殿の怠慢である」


 私もここでスーパーを責める気は無い。でもお前に責められる謂れも無い。

 無性に悲しくなってしまった独身の夜。こんな晩にはカレーが似合う。


 いつ買ったのか分からないレベルで放置されてた圧力鍋を、先日やっと開封したんですよ。ジーニーとか出てきてもおかしくないやつ。けれど幸いにして問題無く使えたので、昨晩はそれ使ってカレー作りました。

 安く売られてた牛すじ肉をメタメタにキッチンバサミで切ってやって、ちょっと炒めた後に圧力鍋にぶち込む。水の分量は通常通り、高圧にして二十分、そっから玉ねぎとにんじんぶち込んでまた二十分。もう気分は地獄の獄卒です。

 気が済んだらすじ肉を解放してやり、あとは好きに味付けをする。カレーのルーもここで投入。やっといい匂いが漂ってくるので、武士がソワソワし始めます。私の背後をうろつき味見を要求してくるので、怖い顔で追い払いましょう。まだ味見ができる段階じゃない。

 そんでもってひと煮込みして、お好みに適当に味を整えたら完成! おめでとう我!


「うむ、旨し! あれほど頑固なはずのすじ肉が、舌の上でとろけるようではないか!」


 武士も大層ご満悦である。時間はかかるけど、ドロドロに肉の溶けたカレーが私は好きなのだ。

 だがこのカレーは、一点だけ注意事項がある。


「……大家殿……」


 ころりと転がったまま、動かない武士。


「腹八分目に抑えたつもりなのだが……! 腹が満ちて、動けぬ……!」


 そう。このカレー、肉もそうだが大量の野菜がドロドロに溶けているため、実際の質量がエッグいのである。しかも飲み物みたいに流し込めるため、気づいたら腹がはち切れそうになっている。

 あとお前、チョコも食ってたしね。胃薬やるから消化頑張れ。


「あのような旨きものどもを、どうして早く外に追いやれようか!」


 独特な価値観してんなぁ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ