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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
283/679

セルフレジ

 武士が現代に来てまもない頃、スーパーにてこんな一幕があった。


「280円、350円……」

「そこの」

「はい」

「そのぴぃぴぃと鳴るもの、よもや某が触ってもよかろうか」

「……はい?」

「実に愉快そうである。某もやりたい」

「いえ、すいませんがこちらお客様にやってもらうものではなくて……」

「しかしやりたい」

「ええー」


 この時点で、買い物カゴを受け取ろうとレジの反対側にいた私が気がついた。レジスターに興味を示すんじゃない! 店員さんを困らせるな!!

 んもう!!

 無理矢理武士をレジから引き剥がし、店員さんに平謝りして一ヶ月ぐらいその店に行くのはやめた。

 武士はだいぶレジスターにご執心で、しばらく店員になりたいと駄々をこねていた。だから私も半ば本気でお子さん用のレジを買ったろかと考えたものである。

 しかし、とうとうそんな武士の悲願が叶う日が来た。


「せるふれじ……!」


 そう。

 セルフレジの登場である。


 自分で商品を選び、自分でピッとやって会計する。武士には願ってもない機械だ。


「この……なんだ。黒い棒共に光を当てれば良いのか……? んなぁーっ! なぁぁぁーっ! できた! できたぞ! 大家殿見てたか! 某できた!」


 うんうん、見てた見てた。偉いね。エジソンもしたことないよ。


「えじ村……?」


 村の名前ではないんだな。いやエジソンも知らなかったな、お前。ごめん。

 まあ、続けて。


「ふおおっ! ぴ、楽しい! 楽しいぞ大家殿! これはいくらでもできてしまう! 大家殿、疾く新しき品を持って参れ!」


 持ってきません。無駄な買い物はしません。


「ぬううっ! それではじきに終わってしまうではないか……!」


 個人的には早く終わってほしいんだわ。周りの視線すげぇから。


「ぬうっ! ぬうっ!」


 うんうん、また連れてきてやるから。


「約束であるぞ!」


 うんうん。

 ……まあ、また一ヶ月あればほとぼり冷めるかなぁ。

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