表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
257/680

くすぐる

「くすぐられるのが弱点です」と言ってる可愛い女の子がいたんですよ。

 この件についてはどう思います、武士さん。


「自ら弱点を明かすなど、愚行極まれり」


 うむ。


「だがこう考えることもできる。かの者はわざと弱点を晒したのだ。そしてあえて懐に忌み敵を飛び込ませ、その隙にブスリと心臓を刺す気でいるのである」


 なるほど、肉を切らせて骨を断つってやつか。


「いずれにせよ、相当な覚悟を持っていないとこの言葉は出てこぬ。愛い顔をして、天晴れな心意気。見上げたものよ……」


 二人して、テレビを見ながらうんうんと頷き合う。

 ――何故、こんな会話をしているのか。

 判明したのだ。私達二人とも、くすぐられるのが苦手であると。


「くすぐられると笑いが止まらんなるでな。某、武士として男として、そういった姿を見られるのは甚だ決まりが悪い」


 そっか。それもわかる気がするな。


「気がするということは、大家殿はそうではないのか?」


 うーん。そもそも私は触られるのが嫌いだからね。


「触られるのが……」


 そうそう。小学生の頃、安易にくすぐってこようとした友人に驚き無意識に肘鉄を繰り出してさ、すごく先生に怒られたことがある。防御が攻撃に転じてしまったんだ。


「ほ、ほう……」


 あと猫ってさ、撫でられる場所間違えると怒るってよく聞くじゃん。私もうそれ猫側の気持ちがわかるんだよ。あれは触ってくる人間が悪い。噛むぐらい全然する。


「ふむ。なんだかそこまで言われると試してみたくなってきたな」


 そっか。

 じゃあちょっと待ってくれ。お前の方がスピードあるし力も強いんだし、ハンデとして指の間にカッター挟ませてほしい。


「待て! それだと大家殿の拳が掠っただけで某血まみれになってしまうぞ!」


 あなた……『覚悟して来てる人』……ですよね。人を「始末」しようとするって事は、逆に「始末」されるかもしれないという危険を常に『覚悟して来ている人』ってわけですよね……。


「あ、じょじょでござるな」


 私はそれぐらいの覚悟でくすぐられるのが苦手だ。


「それはもう殺意と何も変わらんのでは。というかそういうことだから嫁の一人も……」


 参るッ!!!!


「ぬぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 最後、「何をするだァーッ!!」ではなかったのですね。 大家殿も武士殿も元気でなによりです。 ドドドドドドドド… ズキュウウゥン (一言に書こうとしたら、一言は平仮名オンリーとのことだった…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ