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武士がいる  作者: 長埜 恵
2.武士がいる
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武士も風邪をひく

 うちの体温計がバカになりましてね、35.8度以下だとまともに測ってくれなくなっちゃったんですよ。あれですか、もうちょっとした低体温は人間と見做さないと。それか35.8度ごときで仕事なんざやってられないと。

 で、どうしてそんなことが分かったかというと。


「体が熱いでござる」


 現在、武士が39度の熱を叩き出しているからです。


 うそーん。


「熱い」


 が、鼻水も咳も無い。マジで熱だけ。だけどその熱が厄介なようで、武士はぐったりとし、もはや武士の体にしか反応しなくなった体温計は依然としてとんでもねぇ高熱を叩き出しています。

 そういうわけで、病院にぶち込んでやることにしました。保険証? 全額負担? うるせぇ、犬ちゃん猫ちゃんと同じと思えば無問題だ!

 むしろ真っ赤な顔したちょんまげをお医者さんの前に連れて行った時が一番どうしていいか分かんなかったんですよね。武士見て「え?」って顔されて、しれっと付き添ってきた私見て「誰?」って顔されて。こんな異様な状況でも診察してくださったお医者さんのプロ魂には、もう足を向けて眠れない。


 そんで、結果。


「風邪ですね」


 風邪でした。


「抗生剤出しときますが、長く続くようだったらまた来てください。あと、念のため解熱剤も出しときますね」


 実に丁寧に見ていただきました。ありがとうございます。武士は腹を謎の器具でぽんぽんされたり喉を見られたりと未知の体験に戸惑っていましたが、熱の気怠さが勝ったのか大変大人しかったです。っていうか、奴もどこからこんな妙な風邪貰ってきたんだろうなぁ。

 有給は午前中丸々取ってたので、武士を連れて一旦家に帰る。そんで、簡単なお粥とりんご切ったのを作ってやった。


「おかわり」


 食欲がバリバリあるのは不本意であるが、無いよりはマシか。じゃ、食後のお薬タイムである。

 しかし、ここで問題が発生した。


「……ざやく……?」


 座薬。

 解熱剤が、まさかの座薬タイプ。

 つまり、ケツからブッこむやつだったのである。


「……」


 ……。


「……大家殿……」


 やらねぇよー?


 そんなチワワみてぇな目ぇしても、絶対、断固としやらねぇよー?


「しかし、某初めてなのだ!」


 誰でも初めてはございますよ。通過点だ、大人になれ。


「というか尻に異物を入れるとは何事だ! 尻は出口であり入り口ではないぞ!」


 腸はねー、吸収率がバカ高いんだよ。だからそこに薬ぶち込んだら口から飲むより早く効くんだ、確か。

 じゃ、私仕事だから。ちゃんとケツから薬飲めよ。


「ぬあああああっ!」


 武士の断末魔を背に、私はとっとと会社へと向かった。誰がいい歳した武士のケツに薬ぶち込む手伝いをするか、アホ。


 そして、その夜。恐る恐る家に帰ったら。


「ぐぅーっ」


 武士、私のベッドでスヤスヤ寝てました。あの後無事にケツに薬をぶち込み、熱も下がって寝たらしいです。

 案外、大丈夫だった。武士は後に、そう語った。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 『ケツから薬飲めよ』 ……なんだろう、ちょっと格好いいとすら思えた。 酔ってるのかなぁ。 別の話のアレですが、キ○タクが如く、面白いですよね。 プレイはしてないんですが、バイオハザードと…
[良い点] 武士さん、風邪をひいたということは100%のなんとやらではないと言うこと!? [一言] 経験もあるので座薬けっこう大丈夫に強い共感です。ためらってはいたずらに違和感が長引くだけですよね(`…
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